河上朔

楽園のとなり

「でも、それじゃあ神問の儀式は?」 「神の意志を訊くためのものじゃない。気持ちや状況に区切りをつけて、前に進むための儀式だ」 この人の物語が生み出す雰囲気って、ほんと優しくていいな。元気に頑張る女の子を見て、人間不信だった男の子が、人のやさ…

君がくれた世界 wonder wonderful

「なにする気だ、お前」 ルカナートの前で腰に手を当て、シルヴィアナは笑った。 「友達はいないし、恋の前途は多難で、階級って壁は心底面倒だけど、こっち側を見せてくれて感謝してるわ。だから、足掻くわ。まだなにとも戦っていなかったもの。足掻いて足…

wonder wonderful 下

地響き。 圧倒的な歓声を受けるその後ろ姿に。 瞬間、彼の中に広がっていく熱を、見たと思った。 花祭りは、ザキくんのためのお祭り。 ひなた。 あんたはこれをザキくんにあげたかったんだ。 こんなにも、圧倒的に、絶対的にやさしいものを。 最高最高、これ…

wonder wonderful 上

「何を考えているんだ」 簡単にその「仮定」に間違いがないか確認すると、隊長はふと真剣な表情で私を見つめた。 (……いけるかもしれない) 今夜中に案を煮詰めなきゃならないけど。こうなりゃなんだってやるわよ。 「私、魔性の女になるわ」 妹のために怒れ…