神代明

めでぃかる!

「誰だって最初からなんでも上手くできない。ってあなたが励ましてくれたの覚えているかしら」 冷たい指先から伝わる温かな心遣いに、フェイの気持ちも自然と和らぐ。 「……そうでしたっけ」 「そうよ」 二人は同時に声を出して笑った。 「ふふふ。あまり立ち…

姫様とオレ様と眠れぬ魔女に奏でるアルペジオ

「アーウィンさん、ご存知ですか〜?ルチル、昨夜ゼクスさんからいろいろ聞いちゃったんですよねぇ。聞きたいですぅ?」 うふふふ、と含み笑いし、答えも聞かずに話し始めた。 「フィリップ様ってばぁ、サラ様と結婚したいそうですよぉ〜」 ぴくり、とアーウ…

姫様とオレ様とカゲトリバコをめぐる覚え書き

「だって、死ぬまで守ってくれるってことは、アーウィンがあたしをお嫁さんにしてくれるってことだよね?」 「!」 予想だにしなかったことを言われた。アーウィンの顔はそう如実に表していた。すっかり素に戻ったアーウィンがうろたえながら聞き返す。 「お…

ぴぴぴ!

「……でも、あたし、邪魔者だから」 「あらあらあらまぁまぁまぁ。そういうところ、真鶴様にそっくりねぇ。自分では迷惑だと思っていても、他の人はそう思ってないところも多いのよ。世の中にはね、いるだけでいい人もいるの。それは、その人の存在自体が元気…

紺碧ノたまゆら ― ヨミノメ

どうしてだろう。なんで今朝、初めて話をしたような人に胸が高鳴るのだろうか。 一歩、直哉が近づくと、瑠璃は一歩後ろに下がる。その距離にもどかしさを感じる。 やがて瑠璃は怯えを孕んだ眼差しで、ぼつり、と一言呟いた。 「……死なないで」 「え?」 少し…