荻野目悠樹

暗殺者(アサシン)は一度哭く

「私にだって無理よ。殺すことなんて……」 「おまえならできる。おまえしかできない」 硬質な声だった。顔が歪んだ。吐き出す一句一句に、苦痛が伴っているようだった。 「おまえは、暗殺者ではないか」 アイレント軍が苛烈になる中、奇跡が起きるのは聖女の…

暗殺者(アサシン)は眠らない

(ちくしょう、ちくしょう) 調度に体重をかける。床に倒れた重厚な木製の茶棚は、地響きを思わせる音をさせた。 窓辺まで走り、カーテンをつかむ。腰を落として、窓からひきちぎった。 (やめてやる!聖女なんか、もうやめてやる!) 侵略されていくザカリ…

シインの毒

この婚礼は、ザッラーフとイヴラシードを満悦させるだろう。シインを一生涯、帝国に縛りつけておくことが確実になるのだ。 (わたくしなどと婚礼をあげては、あなた様のためになりませぬ) 目から溢れ出る熱い液体は、手でおさえても、とめどもなく頬にしみ…

風、天を駈けよ ソードギャラクシ

「意見を言えというなら」 スケザは正面に向きなおった。 「いけば危ないとか、可能性は低いとか、やっても無駄とか、そんな気持ちで動かぬのは小人のやることだ。なんとしてもやらねばならぬなら、結果や生命など顧みることなく、なすべし」 一同の顔が同時…

野望円舞曲 6

「宙峡」の崩壊の危機を阻止したエレオノーラ。 だがその結果、コンラットが受けたダメージは大きかった。 いつしか惹かれていることに気づき、父への復讐以外の道の可能性を探ったとき、新たな陰謀に巻き込まれてしまった。 それは父、レオポルトと敵対する…