谷山由紀

天夢航海

こんなことって、あるのだろうか。こんな偶然、あっていいのだろうか。いやだ、手が震えてしまう。 あさみの興奮をよそに、一子はすぐ冷静さを取り戻したようだった。紅茶をひと息に飲み干し、空のカップを静かに置いた。 「やってみようか。『天夢界紀行』…

コンビネーション

「だからぼくだって、名倉さんのために野球やるつもりないです。サインが出ればバントもします。空振りもします。でもみんな僕のためにするんです」 言い過ぎかと思ったが止まらなかった。押し寄せる闇が言わせた。 誰もが名倉さんみたいにチャンスを与えら…