賀東招二
「ちゃんと言えなかったけど、好きでした」 ああ終わっちゃったんだなあ。でもなんか先を感じさせる物語でよかった。→ 感想
「それだけの話だ。わたしは彼にそういう感情など抱いていない。そもそもナイアスは年下だし、わたしはそいう未熟な男と、どうこうなりたいなどと夢想したりしない。わかったな?」 「わかった。っつーか、なんでそんなにムキになって否定する?」 「……別に…
『……千鳥かなめ、聞こえるか!?』 『……オープン回線で呼びかけている。返事ができないなら、聞いていてくれ!俺は来たぞ。すぐそこまで来ている!』 『俺は君を連れ戻しにきた。わかるか?連れ戻しにきた!』 涙が出ないわけがない。言葉にならない面白さでし…
「状況は厳しいわ。作戦は困難だし、危機は重大だし、時間もたぶん足りなくなる。でも、実はもっとひどい、とにかく最悪の話があるの。なんだかわかる?」 「?」 「さあ……」 首をかしげる一同に、マオは言った。 「あんたたちが世界を救うってことよ」 ああ…
「逃がした。なんなんだ、あの化け物は」 「セマーニ世界でも滅んだと思われている吸血鬼だ」 「吸血鬼?ふん」 肩で息をしながら、マトバが鼻を鳴らした。 「俺は新手の痴女かと思ったぜ」 ふたりがちょっとずつバディになっていく感じにニヤリ。でも、ティ…
「おまえさんは本気で犯人を捕らえて、妖精を取り戻したいんだな?」 「もちろんだ」 すこしばつが悪そうに長剣を鞘に戻し、ティラナは言った。 「実は俺もなんだ。だってのに、なで俺らはこんな薄汚い路地裏で、みっともなく怒鳴り合った武器を突きつけ合っ…
千鳥。 どうしていないんだ? 君の前なら。君の腕の中なら、俺はもしかしたら泣けるかもしれないのに。 ついに明かされるウィスパードの秘密!そして最後の展開に…… → 感想
「とにかく、男は甘やかしちゃいかん。それが肝要ってことだ」 「泥にまみれて、汗を流せば勝てるほど現代戦は甘くありませんよ」 「もちろんだ」 コートニーは葉巻を地面に捨てて、踵で火種を踏みつけた。 「だがな、若いの。泥や汗、血や涙にまみれたこと…
「煙草あるか」 「ないわよ。あたし吸わないもの」 「それでよく死なないな」 待ちに待ったかいがありました!いやあ、面白い。→ 感想
私がミスリルに入って一年後、部下になったメリッサ・マオが「相良宗介」を連れてきた。 客観的には、まったくの偶然だったといえる。だが、わたしはそれをなんらかの必然、なんらかの運命だと考えるようになった。 神の意思なのか?傲慢な運命なのか? 私に…
やめにできないだろうか。こんな危険なことは全部やめて、ナミたちとのんびり、ナムサクでの毎日を楽しんで生きることの、なにがいけないのだろうか。 「どうしたの?」 「……いや」 ばかげている。 なぜこんなときに、そんなことを?俺はどうかしてしまった…
「野生の猿みたいな体力バカのあなたには、スポーツでは勝てそうにもない。だから、わたしは決めたのよ。あなたに美貌で勝ってやろう、と……!」 「び、美貌ですか」 「そうよ。わたしは全然納得できないけど、あなたは男子の間では評判なの。『黙ってれば美…
「……生き残る?どこにそんな望みがあるってんだ……?」 「なければ作る。それだけです」 テッサが立ち止まった。 「もう一度わたしの報告書を読みなさい。頭を使って、工夫をしなさい。疑問があるなら、わたしやレミングに助言を請いなさい。そんなこともでき…
「なるほど、アレですな」 「アレなしで、温泉旅行は完成されません。アレはあらゆる男の心に、キックを入れてくれるのです」 なにげに空々しいクルツの口調に、孝太郎もニヤリとする。 「まったくですな。アレをやらないのは、彼女らに対してむしろ失礼にあ…
「っ!?いぎぎぎ!ひあっ!?い……いきなり、ナニすんのよっ!?」 「……やはり、本物か」 「当たり前でしょ!?」 「敵の変装かと思った」 「あたしなりに、可愛く迫ってみたつもりなんだけど……、そう言われると、なんかすっげームカつくわね」 笑いが止まら…
OK、この際だ。認めてもいい。あたしはこいつに恋してる。なぜか、いまだけはそう確信できる。この信頼感。この銃火の中だからこそ、こればっかりは否定できない。 さて、今夜はクリスマスだ。 いまごろ日本中の普通のカップルは、うっとりと愛を語らってい…
「もう一つ言って欲しいことがあるんだけどー」 言って欲しいこと?なんだろう? 「その……『ありがとう』か?」 「はずれー」 「……『すまなかった』か?」 「バーカ」 だんだんと、彼女の顔が不機嫌になってくる。 「…………。『きれいだ』…………か?」 「ふふ。…
「テッサ」 「なんです……?」 「どんな一日だった?」 言われて、彼女は少し考えた。何人もの―たくさんの部下たちの顔が、彼女の脳裏に浮かぶ。 「散々な一日でした」 「そう」 「でも、こういう毎日がずっと続いたらいいな……と思いました」 テッサたん最高…
いや。 対策を考えなければならない。自分ひとりで。恭子は絶対に巻き込めない。 思い出せ。 あたしは塔のてっぺんに閉じ込められて、毎日ため息をつくだけのヒロインだったか?白馬の王子さまや、勇ましい騎士団がいなくなってしまったからといって、めそめ…
「いまの話、あんまり気にしないでね。その……あたし、なんだかんだ言っても……」 かなめが散髪の手を止めて、ちょっと躊躇した。それから思い切ったように―だが鏡から目を逸らして、こう言った。 「ソースケのことは、ちゃんと信用してるから」 「…………」 不思…
「いい眺めですね」 かなめがぽつりと言うと、宗介がうなずいた。 「ああ。たぶん、俺は幸運な男だ」 「私もその類だよ」 林水が言った。 「感謝したいが残念だ。彼女が私を、ここに連れてきてくれたのに」 表紙がかっこよすぎる短編集第四弾。 → 感想
「で……でも。本当にあたし、なにもしてないのよ?ここにいる人たちを助けたわけじゃないし」 かなめはすっかり困惑していた。 「それは違いますな、ミス・チドリ」 号令係の人が、彼女に向き直って言った。 「どのような結果をもたらしたか、それは大きな問…
「まさか、カナちゃん……」 「そう。これからソースケを、あの病院に連れてく、ってのはどう?怪談の雰囲気を味わってもらうわけ」 かなめはにんまりとして、怪訝顔の宗介を見やった。 「病院の廃墟か」 「行ってみない?」 「別に構わんぞ。だがそんな場所に…
「てめえ……!この女がどうなってもいいってのかい!?」 かなめの首筋にノコギリを押しあてる。 「殺すか。それもやむなし、だ」 「ちょっ……ソースケ!」 「千鳥。すまんが、あの少年と運命を共にしてくれ。君も副会長ならわかるだろう。再発を防ぐためにも…
「千鳥……?」 「こわかったんだから……」 「すまん」 「心配したんだよ……?」 「それも、すまん」 「ばか……。あたし、何度も死にそうな目にあって―」 そこで宗介が拳銃を抜き、頭上に向けて二発ほど撃った。キャット・ウォークから狙っていた敵が悲鳴をあげて…
「あの調子だったら、あたし、王子さまの花嫁になれたかもしれなかったのよ?そうしたら、いまのひどい生活からも抜け出せたのに。やっぱり人間、夢なんか見ないほうが幸せなのよね……」 しゅんとしたシンデレラを、魔法使いのサガラ軍曹はじっと見つめました…
「そうか。……これは何だ?」 正方形のビニールで包まれた、小さなゴム製品をつまみあげる。 「コンドームよん。うふふ」 「知っている。だが、なぜ高校生がこんなものを使うのだ」 「またまた先生、とぼけちゃって!このスケベ!」 「なにを言っているんだ?…