三浦しをん

白いへび眠る島

「最近ちょっと物騒なのよ」 泥棒すらきたことない、鍵というものがもとからついていない家も多いこの集落で、「物騒」とはどういうことだ。悟史は眉を寄せた。 「……あれが出たの」 高校最後の夏、十三年ぶりの大祭に合わせて、帰省した悟史が、拝島に漂う違…

神去なあなあ日常

「山は近寄りがたくて恐ろしいばかりじゃない。だれも見ていなくても、こんなにきれいなものを、毎年ちゃんと実らせる」 都会から山奥へ。高卒男が林業を従事する村に放り込まれるお話し。面白かったー。はじめは脱走を考えるぐらいイヤイヤだったのに、山の…

まほろ駅前多田便利軒

「生きていればやり直せるって言いたいの?」 「いや。やり直せることなんかほとんどない。いくら期待しても、おまえの親が、おまえの望む形で愛してくれることはないだろう」 「そうだろうね」 「だけど、まだだれかを愛するチャンスはある。与えられなかっ…

むかしのはなし

「ラブレス」 「ロケットの思い出」 「ディスタンス」 「入り江は緑」 「たどりつくまで」 「花」 「懐かしき川べりの町の物語せよ」 7編からなる短編集。すべてが誰かに語りかけるように進む展開。 ホットでクールでシュールな物語ばかり。 特に良かったの…