小林めぐみ

片手間ヒロイズム

「はさみで世界を切るなんて、そんな、乱暴な」 「こんがらがったものは刃物で切るのが常套手段ですっ。これを快刀乱麻と言います!」 赤ちゃんの面倒を見ながら、いつの間にか数々の冒険をこなしてる女子高生の暢気さが素敵でした。 → 感想

六分儀の未来 ねこのめ(3)

「アスラ、いろんなとこ一緒に行ったね。ジゼル、思いだしたよ」 「……また、どこか行くか」 アスラ。 その言葉に含まれる優しさに、ジゼルは堪えていたものがあふれでた。ぽたぽたと涙がこぼれる。目が熱い。胸も熱い。アスラ、ありがとう。絶対、どこか行こ…

羅針盤の夢 ねこのめ(2)

決着をつけなければならない。その結果、どうなるのかが怖い。でもどちらともつかない現状も怖い。 「ねえ―もっと、他に行くところ、ある?」 「まだ逃げるのか?逃げても同じことだ。いつかははっきりさせなければならない。それに、時間が延びるだけ、プレ…

天秤の錯覚 ねこのめ(1)

「ジゼル、お前……」 「ジゼルとアスラが友好的なんて知らないよ!」 「記憶が一部欠落してるぞ!」 二人、同時に声を上げる。ああ。やっぱり。 不良品。 ジゼル、不良品になっちゃったああ! ああ、楽しいと、にやにやなジゼルの冒険物語でした。次も同じよ…

まさかな

「かわいそう……!あんたも、紅生も、あたしも。かわいそうなあんた、かわいそうな紅生、かわいそうなあたし!」 感極まった郁生は、そのままおいおいと泣き出した。本当に、人間の涙は無尽蔵かと思われるほど、彼女は泣いた。 「郁生ちゃん……」 「ごめん。明…

五日目の月

「……が……眠れ……寝たら……だめ……」 「小沢、はっきり喋ってよ。眠れないの?」 「小沢はもう起きないよ!」 がちゃん! 激しく叩きつけられて電話は切れた。 「今の……」 けいは呆然と立ち尽くした。心臓がどきどきしている。 (今の、小沢じゃなかった) (最…

食卓にビールを

「ねえ、わらしべ長者知ってる?」 と声をかけたのは、隣の席の阿部ちゃん。彼女は私の顔と私が握る特性風車を見比べた。 「つまり、そのストローのおもちゃと何か交換してほしいんだ?」 「話が早いね、姉さんっ。ほーら、風車が欲しくなってきた〜。どーし…

魔女を忘れてる

おねがいだ、行かないでくれ。 自分たちがこうであることをたった一人許してくれる親友。自分は強くない。自分を顧みることもできない。世界中の誰もに責められても、たった一人が許してくれるなら生きていける。願いを叶えてくれる魔女なんか必要ない。 お…