山田風太郎
「この六人の女は?」 「ただいま、小伝馬町のおんな牢に入牢中じゃ」お奉行さまは厳然と 「やがて、ことごとく打首にいたす。その裁きに、おまえは不服があるか?」 「もし、このお裁きがまちがっていたら?」 さすが温厚な父も、さっと顔色をかえてにらみ…
「大手門には、おそらく城侍こぞって集まっておろうに、剣俠児、まことに堀の女たちを救い得るか?ああ!」 男・十兵衛の痛快さに手をたたき、狂気が生み出す駆け引きにドキドキでした。しっかし格好いいなあ、十兵衛。父上の前だとヘタれる姿が、また魅力的…
「しかし、ききしにまさる恐ろしい奴ら。さすがのおれも冷汗をかいたわ。……それにしても、おれが斬るわけにゆかず、きゃつらをあの女たちに討たせるとすると、これアちと骨だて」 十兵衛かっこいー。こりゃ惚れるわ。娘たちの仇討ちを手助けするあの手この手…
「仰せの通りでございます。マリア様」 と、十四人の女たちはいっせいにいって拝礼した。 「爺がわたしやそなたらに、大友の忍法を仕込んでくれた苦労が、いま無駄でないときがきた。わたしたちはたたかわねばならぬ。鈴はまもりぬかねばならぬ」 他にこれほ…
「おそらく、その真田に縁ある女、ひとりか、五人か、それはわかりませぬが、忍法を心得ておるとしか考えられませぬ」 「忍者か!」 家康はさけんだ。 「お千の身辺に真田の忍者がおる。しかも、それが秀頼の子を身籠っておると申すか?」 こんだけはちゃめ…
「そちたちは、徳川の世継ぎを定めるために、たたかってくれる所存があるか」 「徳川家のおんとめとは申さず、服部どののおゆるしさえあれば、いつなりと」 と、老人と老女は同時にこたえた。 「ゆるす、ゆるす。先代がそなたらにかけた誓いの手綱をいま解く…