鳥羽徹

オルキヌス(4) 稲朽深弦の調停生活

「私は秋永壱里を目指してなんかない。私が目指しているのは最高の調停員だけだ」 この島に来て以来、ずっと共に過ごしてきた相棒に向かって、笑う。 「だから、私はやるよ。たとえ相手が、秋永壱里であってもだ」 壱里が帰ってきた?という騒動から、自分に…

オルキヌス(3) 稲朽深弦の調停生活

「……もう一度言いますが、この件は貴女にとって有益ではありません」 「わかってる」 「この件そのものも、解決するのは容易ではないでしょう」 「ああ、望むところだ」 「キマイラと ― ひいてはあのオルカの街と敵対することになるかもしれません」 「だか…

オルキヌス(2) 稲朽深弦の調停生活

「深弦、怒鳴っても胸は大きくなりませんわよ」 「黙ってたって大きくなるわけじゃないだろ!?」 「あら、先日学会で無口な方が胸が大きくなりやすいという研究結果が出ましたのよ」 「……」 深弦は一瞬にして口を閉ざした。 「もちろん嘘です」 「一瞬でも期…

オルキヌス 稲朽深弦の調停生活

「強さには多くの種類があります。その中で調停員の強さが何かと問われれば、どれだけのオルカから信頼を得られるかに尽きるでしょう。ならば深弦殿、全てのオルカの信頼を背負いましょう。そして、それでもなお優しさを忘れずにいましょう」 オリーブは一息…