似鳥鶏先生講演会レポート

関西ミステリ連合(立命同志社、大阪、大谷、関西学院大学のミステリ研より成る団体)が主催する似鳥鶏さんの講演会に参加してきました。
活動報告枠が30分あったのに、5分で終わってしまうというあたりがアレでしたが、その辺はいいや。
似鳥鶏さん。でかい!180cm超えてること間違いないです(僕より大きい)。
一番初めの挨拶が、「先に謝っておかないといけないことが。似鳥鶏という名前は、男性か女性か分からない。あとがきの一人称も【わたし】なので、もしかしたら会場にいらっしゃる方の中で、もしかしたら似鳥鶏は美少女だと思った方がいたらすみません」はどうかと思ったけど、美少女だと思ってた僕なので何も言わない。ちなみにすらりとしたイケメンでしたよ。
さて、講演会は、あらかじめ用意された質問に似鳥さんが答えるという質問形式でした。メモったものから。間違いがあったらご指摘ください。

  • 小説を書き始めたきっかけは、小学校の三年生ぐらいから。小説ドラゴンクエストみたいなもの。完結まで書くようになったのは高校ぐらい。
  • 小説家になろうと思ったきっかけは、星新一ショートショートコンテストの作品を読んで、これなら書けるかも。
  • 尊敬する作家さんは、星新一先生。ミステリ作家としては、最近、北川歩実先生の作を読んで、こういうのを書きたいという憧れが。
  • 核となるアイデアは、他の人の作品を読んでるときに。読んでるときに、こういう展開にした方が、このアイデア良いな、などから。
  • 文章を書いてるときに気をつけるのは、書き流さないこと。ミステリの場合、説明をしなければならないことが多いが、それをただ説明する、説明のために会話をさせる、といったことは、読んでる人からしたら退屈なので、書き流さないように。全体的には、このシーンは退屈なんじゃ、この会話は必要か?を考えて、分量を減らすようにしてる。
  • 登場人物にモデルはいる。サークルの友達・大学の先輩。ただ、まんまその人というわけではなく、声のモデルみたいな形。主人公と会話をするときに、私がその人と会話をするつもりで書く。そうすると、その人らしいセリフがでてくる。メインキャラは、だいたい複数の人の構成。理屈っぽいところはこの先輩で、下品なところはこの先輩みたいな。
  • 高校時代に所属していた部活は、バスケットボール部。高校の前半はバスケ、後半は演劇部。バスケで作品を書いてみたいけれど、運動部ってミステリが書きづらい。
  • 表紙の女の子は誰だ?というのは、周りの人から良く聞かれました。私とtoi8さんと担当さんの中では「これは誰ってものじゃないだろう」。でも、いろいろ聞かれているうちに誰だか分からなくなった(笑)。誰を書いて欲しいとお願いはしていない。
  • 自分の作品で気に入ってるのは、二作目のほう。書いたときにこれは受けがいいと思ったのは、二作目の第三話。短編としてみても評判いいんじゃないかな。
  • 英題は著者が決めろと言われる。非常に困る。担当さんに泣きついて、五つ考えて送りつけた。はじめはアフタースクールゴーストバスターズ。文法おかしい指摘。担当さんにお願いして「ハイスクールゴーストバスターズ」に。二作目、連作短編の総タイトルは難しい。二冊あったので。「新学期編」「卒業式編」は担当さんが考えました。
  • 自転車でふらっと旅行するのが好き。車で行くような距離を走るのが大好き。ふらっといって日焼けをして帰ってくる。ただ、いまはなかなかできない状況なので……暇になったらやりたい
  • 大学時代、あまり本を読む人ではなかった。良く読んだのは、筒井康隆。大学に入ってミステリを書くようになって勉強のためにミステリを読むように。宮部みゆきさんとか。まあすごすぎて全く勉強にならなかった。ジャンルはオーソドックス。小学校の頃は、宗田理とか。(司会:作中でドグラマグラに触れてましたが)ドグラマグラは、ミステリとは関係ない興味から手に取った。読むと頭がおかしくなると聞いて、これはぜひ買わなければ。
  • 最近読んだ本で気に入ったのは、さきほどあげた北川歩実先生の「虚ろな感覚」。短編集ですが、個々のクオリティがすごい。あと最近ではないですが「九マイルは遠すぎる」。あれは神業。他の興味はあまりない。映像が苦手。映画館にはほとんどいかない。だいたい読むのは本。マンガは読む。最近おもしろかったのは「聖 ☆おにいさん
  • 筒井康隆ロートレック荘事件」みたいなトリックをやってみたい。最近、勉強というか参考にしてるのは、江戸川乱歩先生の「世界短編傑作集
  • 米澤穂信先生の作品が大好き。いま「追想五断章」を文庫化するまで買わずに我慢できるか、という挑戦をしています。米澤作品で好きな作品。「さよなら妖精」が凄く衝撃的、キャラクタが面白いかわいらしいで小市民シリーズも。
  • 書いてる時、どこがイケると思ったか。二作目の最後でストーカーがあの人だったというのは、ショックだったんじゃないかなー。書きながら主人公可哀想だなと思ったんですけど、半分ぐらいざまあみろと。決していじめたいと思ったわけじゃないです。まあ、多少酷い目にあっても。(司会:日常的にも人を騙すと?)よく誤解されますが、ミステリ作家は日常的に人を騙したりしてません。ダンサーが道ばたを歩いてるときに、踊ってないのと一緒です(笑)
  • 作家になって良かったと思うこと。何をおいても、お金を出して自分の作品を読んでくださる人がいること、これほど嬉しいことはありません。あと、授賞式のパーティに行くと、綾辻行人がいた!みたいな体験ができる。怖くて話しかけられないけど。苦しいこととしては、常に将来の不安。
  • 高校生や中学生というのは、面白い時期なので、今後も好きで書いて行くんじゃないかなと。各部活にいた人にしかわからないネタは、書いていて楽しい。青臭いところとか。美術部や吹奏楽部は所属していたわけではないが、演劇部に入る前から裏方を専門に扱うスタッフ部みたいなところに所属していたので、いろんな部を手伝っていたので、そこいら辺りの雰囲気を。
  • 殺人を書かないポリシはない。書いてみたい。話の整合性があるので、できた話次第ではあります。(司会:殺人が起きる話で好きな作品は)黒後家蜘蛛の会、あと、クリスティーは、ほんと凄いですね!
  • 新作。シリーズものの続編で、短編集を。連作ではない。刊行時期はまだ未定。短編ひとつひとつのクオリティの高さで頑張れてると自負。それと、創元推理文庫から学園ミステリアンソロジーが出版されますが、そこに短編を一本。

質疑応答

  • 眼鏡っ子は好きですか?
    • 特に好きというわけではない……ですが、決して嫌いじゃないです!表紙の女の子は、いいですよねー。眼鏡とかかけててもいいですよと、toi8先生にメールをしたのは私です。
  • 鮎川賞に応募したきっかけ
    • 大学三年ぐらいからミステリを書き始めたら楽しい。自分で本格ものだと思ったので。
  • ペンネームの由来
    • 本名がちょっと変わっているので、これがでるとどこでも自分だと分かってしまう。恥ずかしい。あまり格好いいペンネームだと顔出ししにくくなるので、なるべく情けないペンネームを。鶏。あと大学の友人から、鶏とかチョコボに似てると言われたことから。似鳥鶏
  • ひとつの作品を仕上げると、次の作品に取りかかる際、これ以上の物は書けないというプレッシャーがあるのでは?
    • 作品を出す以上は、最新作は必ず最高傑作という思いで書いているので、当然プレッシャーはある。新作を書くときに必ずついてくる。そういうのと付き合う方法は、とにかく書き始めてしまう。プロットは前のと比べると……と思っても、書いているうちに良くなることがある。
  • 受賞したときの気持ち
    • 二次選考の途中で、いまの担当さんから電話があった。油断している時期に、突然電話がかかってきたので頭の中が真っ白でした。あとで聞いたら、担当さんが何を言っても「はい」しか言わなかったそうです。
  • 伊神さんを読んでたら、有栖川有栖さんの江神さんを連想しましたが……
    • 一冊目が出版されてから、しまったなー。いつか誰かに突っこまれるんじゃないかとビクビクしておりました。
  • 読書傾向で筒井康隆などSF作家が多かったようですが、ミステリよりもSFが好きですか?
    • ミステリもSFも大好き。特にジャンルを意識してはいない。SFというよりかは、ミステリというかは、作家。あと賞をとった作品はどれも面白いので、そのあたりを読んでる。
  • 脚注ネタ。中村コンプレックスが絶妙なネーミング。あれ分かる人がいないと思うのに、それでも書いたのは?
    • あのネタをわかってくれたことが嬉しい。どうしても自然に書いてしまうと、同世代、あるいは若い人向けにネタがかたよってしまう。上の世代がクスッとくるネタ — 紅茶キノコみたいな — をいれている。
  • 機械音痴エピソードを
    • 炊飯器のタイマーに二年ぐらい気づかなかった、とか。
  • ガンダムはお好きですか?
  • 他の賞に応募は?
    • 短編の賞にはいくつか。原稿用紙をもらった経験はありますが、ぼろぼろ落選。
  • 高嶋先輩。「あの人、男だからな」に傍線をふった意味は?
    • 学校では、たまに男扱いされる女の子がいて、ああいう意味。傍点がついていないと、本当に男かどうかがわからなくなる。
  • あとがきがすごく長いですが、思い入れは?
    • 長くしようと思って長く書いたわけでは……何を書いても良いので却って何を書いて良いかわからない。参考にしたのは、乙一先生。ちなみにあとがきのページ数は、製本の関係(16ページ単位)による。
  • 物理トリックとロジックとどっちが好き?
    • どっちも大好き。理想は、緻密なロジックと鮮やかなトリックの融合。
  • ある登場人物の実家が、愛媛県松山市という具体的な地名が出たけれど
    • 設定的に関東。そこから「わざわざ行ってきたの?すごいね」という場所を。友達が四国にいることもある。
  • 葉山くんと伊神さんがラブラブしてるように思ったんですが、これは腐女子サービスですか?
    • ラブラブ……してますか?そうですか!意識して書いたわけではないんですが……
  • キャラ萌えは意識してますか?
    • 「にゃ」みたいな人はいませんが……「な」と話してるけれど「にゃ」に聞こえる人はいました。
  • 大学時代のサークルについて。
    • ミステリを書き始めたきっかけは、サークル内で、「かまいたちの夜」がバカ流行した時期があって、あれって流行ると身近な人を登場させたくなる。サークル内の何人かが、登場人物を実在のサークルのメンバーに置き換えて、ミステリの競作を。いま思えば、失礼なことを……。そこで初めてミステリしっかり書いた。それと、そのサークルの中にサークル内サークルがあって、卒業後にも競作というか同人誌的なことをやっているメンバーがいて、そこからもうひとりルルル文庫の「沙漠の国の物語」でデビューした方がいます。音楽サークルだというのに……
  • ヴァイオリン。朝から晩までやっていたけれど、しずかちゃんレベル。なので、隠していこうかな……。ヴァイオリンを選んだのは、当時ロビー・ラカトシュというジプシーヴァイオリンの人がいて、それがめっちゃくちゃ格好良かったから。第二外国語ハンガリー語を取ったほど。

このあと時間が結構余って、似鳥鶏さんから会場に向かって質問をというよくわからない話になってましたが、驚いたのはミス研の集まりなのに、クイーンを呼んだことない人が結構いたことです。そういう時代なのか……

その後サイン会が開催。

面白かった。