山本瑤

鏡の国の灰かぶり姫

「あたしは決断したの……。一番大切なものを守るために。だから、王宮を出たの」 「あなたは、決断することができる?一番大切なものは、何?」 好きな人のためを思ったこととはいえ、忘れ去られることの何と苦しいことか。王妃を騙ったとして糾弾しに来たシ…

鏡の国の仮面舞踏会

「ルーダンの理は、どうなる?」 「人はいつの世も神を欺こうとするもの。また、神は意外に容易く欺かれるもの。そうではないか?王太子よ」 ああ、こういう決断を下してしまうのか……ようやく思いが通じ合ったというのに、その幸せをかみ締める間もなく、失…

鏡の国の眠り姫

「それで……何なの、提案って?」 「うん」 シリンは、なぜか、天井を見上げるようにして視線を逸らした。そして、とんでもないことを言った。 「僕と恋愛をしてみないか」 相変わらずもどかしかったけれど、ようやく届いたか。隠し事されて塞ぎこんでた彼女…

鏡の国の恋人たち

「おまえの父親は、もういない」 シリンはささやく。 「だが、僕がいる」 そのことを、ティファニーに正しく理解させたいと思った。 「― 僕がいる。忘れるな」 今回はシリンが可愛かった。皿洗いとかオムレツ作りとか意外な一面が見られた……のはいいとして、…

鏡の国の魔法使い

「妃殿下。妃殿下は、まさか、本気でシリンのことを……」 ティファニーは慌てて否定しようとしたが、真っ赤になってしまった顔が、心を雄弁に物語っていた。 「そう……ですの」 「違う。違います」 ああもうじれったい二人だ!好き合ってるくせに仮面夫婦して…

鏡の国の王太子殿下

「ま、そんなに深刻に考えなくても。結婚してみて、嫌なら離婚してしまえばいいんですよ」 「……あまりにも軽すぎない?精霊のくせに」 「なぜ?わたくしは、知っているだけですよ。誰と結婚しようが、ご主人様、あなたの価値は変わらないと」 ああもうじれっ…

鏡の国の女王陛下

「魔法の鏡をのぞいたあなたは、もう、どんなことにも耐えられる。あなたも、そろそろ、自由になる時が来ているからよ。亡きお父上に縛られるのではなく、あなた自身の冒険に乗り出す日が遠からず来る。その時が来たら、迷いなく船出するのです」 しっかりも…