淡路帆希

花守の竜の叙情詩(3)

「花の種は、冷たく思い雪の下で春を待つの。それと同じ。どれほど雪が降り積もっても、私は耐えられる。光が降れば咲くことができるって、知っているんだもの。だって私は―」 名を呼ぶと、彼女は双眸を涙で潤ませて頷いた。 「あなたがくれた名を、私は誇り…

花守の竜の叙情詩(2)

たとえ会えなくても、月明かりに照らされていれば咲き続ける雛罌粟でいられる。月神に仕える彼がこの大地に平穏を降らせることで守ってくれているのだと感じることができる。 けれど、それでも、会いたいと願ってしまう。 寂しさは消えない。頬に触れた彼の…

花守の竜の叙情詩

「どうしてその名で呼ぶの?<エパティーク>はあの日、お母様たちと共に死んだのよ。私の名はアマポーラ。あなたがくれた名前。エレンが呼んでくれる名前。あなたがどんな思いでこう呼んでいたのかなんて、もういいの。どんな場所に咲いたって、雛罌粟は美…

紅牙のルビーウルフ 7 君に捧げる永遠の花

「ルビーウルフ!」 寝室に踏み込んできたジェイドは、なぜか肩で息をしていた。ここまで走ってきたようだ。 「どうなさったの、そんなに慌てて。何かご用?」 うとうと眠りかけていたせいか、少し声が掠れている。こっそりと咳払いをして、ごまかすようにキ…

紅牙のルビーウルフ 6 自由の風が吹く夜明け

「恋なんてしなければよかった。気づかないままでいればよかった。――こんなもの見なければよかった。 首飾りを、ぐっと握り込む。 全部、今さらだ。何もかも手遅れだ。自分の気持ちを自覚して、ジェイドの思いを垣間見て、なのに二人の心が交わることはもう…

クローバーに願いを 紅牙のルビーウルフ Tinytales 1

「やっぱ、好きだなぁ」 「え?」 「なんか居心地いいんだよね、ここ。ジェイドの匂いがするから」 この人は短編のほうが映えると思いました。いやあ、素敵素敵。→ 感想

紅牙のルビーウルフ 5 宝冠に咲く花

もっと自分がしっかりしていたら。せめて裁きの天秤を手放すことをしなければ……。 「自分を責めてはいけないよ、ミレリーナ。諦めることだから。終わったものを振り返ることだから。まだ終わっていないんだよ。わかるね?」 そうだ。過ぎたことを振り返って…

紅牙のルビーウルフ 4 皓白の反旗

言葉がなくてもわかる。彼は信じてくれている。だから― 「大丈夫、あたしは盗賊だよ。盗られたものを取り返せないような根性なしになんか、なるつもりはないね」 にたりと笑って言ってやった。これでもう逃げられない。 けれど、それでいい。後に引けないな…

紅牙のルビーウルフ 3 西の春嵐

誠意の体現みたいな男。だからルビーウルフは彼を探しに行くのは嫌なのだ。ジェイドが自分よりクラリッサを選んだと、現実を突きつけられるのが怖いから。 哀しい、じゃない。よくわからない感情。あえて言うなら、腹が立つ。 ちょっと物足りない気も……なシ…

紅牙のルビーウルフ2 面影人魚

変なキャラが登場してきたなあ。 → 感想

紅牙のルビーウルフ

かつて追われた王の娘シャティナ。 忠臣と称された宰相により助け出されたその赤ん坊は、盗賊の手に渡っていた。 目の色にあわせ、ルビーウルフと名づけられた少女。のびのびと健やかにすごしていた毎日。 だが、運命は過酷だった。 王無き今、権力を握るウ…