近藤信義

ドッグオペラ

「これから話すことは他言無用でお願いするよ、いいね?」 おれは静かにうなずいた。 「実は今、分家の間で鷹屋一門を当主の座から引きずり下ろそうという動きがあるんだ」 タフガイさんのハードボイルドもの。中盤以降はボロボロで、それでもなお動き続けて…

ゆらゆらと揺れる海の彼方 10

「お願いです」 涙で視界が曇ってしまい、ジグルドの顔もまともに見えなかったが、今はそれでよかった。はっきりと見えてしまったら、きっと言えなくなる。だから、今しかない。 「あの子を―」顔を伏せ、エミリアは言い切った。「あの子を助けて……」 すれ違…

ゆらゆらと揺れる海の彼方 9

「簡単な引き算もできないのか、お前は。ゼルツタール公もゼッキンゲン公も動けない。ならば、残るのは誰だ?」 「え……?」とさらに首をひねったオスターデはしばし考え込んでいたが、ようやく答えに気づいたらしい。 「だから最初に言ったろうが、ここから…

ゆらゆらと揺れる海の彼方 8

「ジグルドは……帰ってこない」 「帰って……え?」 「ダーレンの戦いでジグルドは行方不明になった。酷い乱戦で、僕らもぎりぎりまで粘ったんだけど……離れ離れになったきり、そのままなんだ」 「……」 「ローラ」 「嘘……だよね。そんなの冗談なんでしょ?」 ま…

ゆらゆらと揺れる海の彼方 7

「そう心配するな。なんとかなる」 「なんとか、ね。そういうの、なんて言うか知ってる?」 「前向きと褒めたいなら、遠慮するな、いくらでも賞賛してくれてかまわないぞ」 「ちーがーう。楽観的って言うの。ついでに無計画と無神経もおまけにつけてあげる。…

ゆらゆらと揺れる海の彼方6

第二部バストーニュ大戦完結編 → 感想

ゆらゆらと揺れる海の彼方 5

バストーニュで起こった内乱。 辛うじて難を逃れたラシード一行だが、本国への道のりは遠い。 そして随一の国力を誇る国の内乱を、世界国家を目指すアールガウ 軍が見逃すはずはなかった。 軍を投じるアールガウの後手に回るバストーニュ。 世に言うバストー…

ゆらゆらと揺れる海の彼方 4

アールガウの攻勢をかろうじて退けたローデウェイクは独立する。 アールガウはそれを許したわけではないが、諸事情によりいったん停戦する。 そして訪れたつかの間の平和。 そこで持ち上がった話は、現国主ラシードの"結婚"話。 国主である以上、結婚が自分…