柴村仁

4 Girls

なんなのだろう、この状況は。 失恋した直後なのに、失恋した相手とほぼ二人っきりで、学校から遠ざかるバスに乗っているなんて。まったく、ワケがわからない。 失恋とかコンプレックスなどを描いていますが、内に篭もるという感じはなく、さらりと読めます…

セイジャの式日

「しんどいですよ、絵を描くのは」 声は微笑している。しかし表情が見えない。 「絵を一枚仕上げるたびに、絵にサインを入れるたびに、もうやめよう、これで最後にしようって、考える」 「じゃあ、なんで、やめない?」 「描いてても辛いけど、描かないとも…

ハイドラの告白

「この町には、知人に会いに来た、と言ったでしょう。具体的に言うと、実のところ俺は、布施正道に会いに来たんですよ」 一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。 顔を上げて俺を見る由良の瞳が、どこかからのわずかな灯りを反射して、暗がりにうずく…

プシュケの涙

「なあ榎戸川」 「……何」 「俺たち二人で探ってみないか」 「何を」 「なぜ吉野彼方は自殺したのか」 切なく、余韻に浸れる物語でした。最高傑作級〜。 → 感想

ぜふぁがるど

「前口上?」 『つまりな……たとえば「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!」とか「遠からん者は音にも聞け、近からん者は目にも見よ!」とか……そういう、大した意味はないがカッコよさげでインパクトのあるセリフを、名乗りの前に乗せるんだ』 「いう必要性が理解で…

我が家のお稲荷さま。7

「しょーがねーなー。俺もあんま金ないけどちょっとくらいなら貸してあげましょう」 「……〜〜〜〜」佐倉はワナワナと震え、「……ひっ、人の気も知らないでー!」 高上の胸の辺りをボクーンと殴った(空腹のため攻撃力0)。 「ギャッ、何!?」 「高上はいつも…

E.a.G.

「人間ってときどきすごく不可解だ」 「なんだいきなり」 「なぜ裏表があったり、言ってることとやってることが違ったり、言いたいことを言わなかったり、なのに理解してもらおうと期待するんだ?」 「さぁ」 「複雑だな」 「逆に言えば我々が単純なのかもし…

我が家のお稲荷さま。6

「ここでお別れだ、とりあえず」 レンは昇の横に立って言った。 「とりあえずってのは何なんですか」 「いつかまた遊びに来るよ、ってこと。今日の御礼をしに」 「例は特に必要ないです」 「遠慮するなって」 「いやもうホントに。平穏な日々を礼としてオレ…

我が家のお稲荷さま。5

最近、狼に襲われた人がいるという噂が流れている。透の友人も被害にあったらしい。 妖怪の仕業かと思いきや、土地神である六瓢ですら存在を確認できていないという。 ならばいったい何者が? やがて三槌の当主である昇に忍び寄る黒い影。 友人に連れていか…

我が家のお稲荷さま。4

鬼の王となるべきものを補佐する存在である白鬼。 だが、封印をといた瞬間、周りのものの生気を奪い取り、脱走してしまう。 行方がわからなくなった白鬼。 しかし狭い世間。はたして、予想通り透の下へ戻ってきてしまった白鬼。 そこから透と白鬼の逃走が始…

我が家のお稲荷さま。3

楽しみにしていた文化祭も一段落した秋のある日。 手紙で呼び出しを受けた昇は、それが甘いものではなく、危険なものであることに気づいた。 だが、人間である昇るが鬼にかなうはずが無い。 逃げ出すことができず、さらわれた昇。 そのことを伝えられ「ビャ…

我が家のお稲荷さま。2

夏休みも終わりに近づいたころ。ムビョウと名乗る女性が透に近づいてくる。 ムビョウいわく「サカエサンを一緒に探してほしい」 きれいな人だが人間ではない感覚。でも透は一緒に探し出した。 それがムビョウの罠であるとも知らずに・・・・・・。 相変わら…

我が家のお稲荷さま。

大ばば様が倒れたので来てほしい。 叔父に言われて昇と透は三槌家の実家を訪れた。 だがそこで言われたことは「透がヨーカイに狙われている」ということだった・・・。 三槌はミズチ、つまり水の霊を表し、代々水気を祀ってきた。 弱っているとはいえ、普通…