豊島ミホ
「好きなの?」 え、と思った。多分顔に出ていた。それを見てとったのか、雪枝さんは畳み掛けるように言った。 「違うでしょ?」 中学生の男の子を拾った雪枝が、四年後に再び中学生と出会って……というお話。普通じゃない、ように思ったけれど、だんだんと思…
私はシン君の恋人になりたいわけじゃなかった。デートをしたいわけでもなかった。ただ一緒に歩いていればじゅうぶんなのだ。謙虚な気持ちで言ってるんじゃない。わたしはずいぶん傲慢なことを思っている。私は特別な人の背中を特別に追いかけているのだとか…
だって、銀杏泥棒……。 誰にも見つからないように、緑の葉がちらつく枝を盗み出す。そんなことをする女の子が、この場にいるなんて。 「なにー?どうしたの、春」 答える余裕なんかない。わたしはただ、自分の胸をすっと抜けていった、あの女のこの姿を思い描…
入学して一ヶ月。うちの予備校の隣にラブホが建った。 以来あたしは空き時間のたびに屋上に来て、のぞきちゃんな日々。ごめんねラブホのカップル達。ごめんね何も知らないパピー&マミー。ゆるしてちょうだい、だってあたし十八歳。発情期なんでございます。…
「どうして言えないの?『忘れないで欲しい』って」 私は、お兄ちゃんを否定したりしないのに。確かに、お兄さんはたくさんの人に否定されてきたかもしれない。けれど、私はその人たちと同じじゃない。 「言えばいいじゃん。何年会えなかろうが、また会おう…