野尻抱介

魔法使いとランデヴー ロケットガール 4

「まきこんじゃって、すみませんでした」 「いや、僕は楽しんでいるから。ここはいい処だね」 「そうですか」 「宇宙研が東大にあった頃の雰囲気に似てる。個人主義が尊重されていてね。それでいて団結するときはがっちり団結したもんだよ」 「へえ」 「君が…

沈黙のフライバイ

「こちら大風呂敷一号。高度五十キロ地点通過。えー、ここに宣言します。ただいま人類初の凧による中間圏有人飛行がはじまりました」 『おめでとう』 中喜多教授が応答した。 『君のヒップは小さいが、人類にとっては巨大なホップだ』 「オヤジギャグ禁止」 …

私と月につきあって ロケットガール3

「月に降りるまでに、あたしが聞いときたかったのはひとつだけ。そっちがさ、どれくらい行きたがってるかってこと。フランス人て、どうもそのへんで心が通わない感じだったんだ。でもこれでいいよ、もうわかった」 ゆかりは言った。 「這ってでも行こう。月…

天使は結果オーライ ロケットガール2

「危険なのは、わかるの」 「うん」 「でも、その……ただの機械だけど……」 「うん」 「オルフェウスには、命を賭ける価値がある ― そう、思うから」 そして茜は、感情を爆発させた。 「私 ― どうしても、オルフェウスを助けたい!」 ガールズたちが繰り広げる…

ロケットガール1 女子高生、リフトオフ!

「聞いてくれ。これは我々の夢なんだ」 ゆかりは足を止めた。 「多くは望まん。少しだけ、心を向けてくれんか。宇宙に行きたくても行けない者が、ここには大勢いる。そいつらがどんな気持ちで君を見守っているのか」 「……」 「君が望んで宇宙飛行士になった…

ベクフットの虜 クレギオン 7

両親には安全な仕事をしていると連絡しておきながら、危険が絶えないミリガン運送。 だがついに、自分たちがやっている仕事がどれほど危険なものであるかがバレてしまった。 母親からのメールを読んだとき、メイは硬直した。 「すぐ家に帰りなさい」 同時に…

アフナスの貴石 クレギオン 6

突然だがミリガン運送は解散した。 二人の口座に二か月分の給料を振り込んでおいた。 船は売った。私物はホテルに届ける。ロイドは書置きを残して消えてしまった。 あまりに突然の出来事。マージもメイも呆然とする。 そして、アルフェッカ号の引き取り手が…

タリファの子守歌 クレギオン 5

一攫千金を狙うロイドが次に目指そうとしたところは惑星タリファ。 強い砂嵐に見舞われるその惑星は鉱山の宝庫。 かつてのマージの教官がそこへ行ったことを知ったメイは一度会ってみたいと主張。 難色を示したマージだったが、結局、その惑星へ行くことに賛…

サリバン家のお引越し クレギオン 4

「今度の仕事は君が見つけたものだ。だから君がミッション・ディレクターをやれ」 積み荷がないミリガン運送の次の仕事はサリバン家の引越しの運送。 ノウハウのない仕事ではあるが、赤字覚悟でロイドは仕事をメイの手に委ねた。 他の引越し屋の見積もりの半…

アンクスの海賊 クレギオン 3

マフィアの荷物に手をつけたことで(麻薬なんてもってのほか!)追われているミリガン運送。 クレメント・ファミリーから逃れるため逃げ込んだのは惑星アンガス。 珍しく割りのいい仕事を請け負ったが、それは周域に海賊が出るからだった。 こまめに進路を変…

フェイダーリンクの鯨 クレギオン 2

つかの間のバカンスを楽しんでいたミリガン運送の社員。 いつしか追手が確認され、あわてて逃げ出す三人。 もはや追いつかれると思い、逃れるためにガス惑星に紛れ込むことを決意したマージ。 ぎりぎりのところで助けてくれたのは、ガス惑星の中に住んでいた…

ヴェイスの盲点 クレギオン 1

「なあマージ……」 この言い方をするときのロイドはとてつもなく非常識な提案をする。 目の前にはかつての大戦により機雷に囲まれた惑星。 一度滅びかけた文明は今からでは想像もつかぬほど進んでいた。 その大戦時の地雷があるということは、周りから隔離さ…

太陽の簒奪者

水星で何かが始まっていた。 "アンテナの生えた水星" "水星に巨大建築?" 水星を覆う繊維状のリングにセンセーショナルな見出しが駆け巡った。 それは明らかに人工のもの。 異星文明の存在を考慮し、メッセージを送信するも答えはない。 やがて、そのリング…