すえばしけん

ひきこもりの彼女は神なのです

「簡単に言うとね」 てとらさんは眠そうな目をさらに細めて笑った。 「このニュートラルハウスの住人のほとんどは、人間たちが?神?と呼ぶレベルの存在なのです!」 神様とか妖怪とか、人あらざるものと人が共存する街で、ハーフの男の子が、神様たちが集まる…

スクランブル・ウィザード(7)

「確かに先生にはすごくご迷惑を掛けていますね、私。怒られるかも……いいえ、もしかしたら恨まれたり嫌われたりするかもしれません」 胸がちくりと痛んだ。 「でもね、私が私で居るということを最初に教えてくれたのは、先生なんです」 ああ、もう最高!大人…

スクランブル・ウィザード(6)

小さく苦笑が漏れる。意外なことに、悪くない気分だった。 楽しかった―おそらく育成校での日々は、そう表現できるものだったのだろう。 だが、自分はここから去らなければならない。 過去と決別するために。姉を殺したあの男とけりを付け、前に進むために。 …

スクランブル・ウィザード(5)

「まあ、貴重な人材といえど、私どもも無条件採用というわけには参りませんので」 いつもの笑顔を浮かべ、アデルは言う。 「まずは、あなたの生まれ故郷 ― 日本を敵に回す覚悟があるかどうかを見せていただくことになります」 姉・一花と過ごしたバレンタイ…

スクランブル・ウィザード(4)

「先生って、ときどき私をものすごくダメ人間にするね」 強く優しいからこそ暴走してしまった思いが辛かった。月子が曲がらないのは、同じ境遇の先人がいたからだよなあ。であるならば、彼女の行動も無意味でなかったと信じたい。しっかし、月子は格好良かっ…

スクランブル・ウィザード(3)

「はいはい。では、いつも通り進めましょうか。今回のお仕事は二点。特別対策局所属、一級特殊執行官、能勢和希への接触。及びテロ組織『大祓』に対する扇動工作ですね」 月子の可愛らしい好意と、十郎の月子を見る眼の変化が、とてもいい感じ。だったのに、…

スクランブル・ウィザード(2)

「俺はお前がどんな道を選ぼうと、干渉する気はねえ。ただ、一つだけ言っとく。無力感に負けて逃げんなよ。後悔しか残らねえからな」 月子の先生への思いがから生まれる嫉妬とか不安が可愛くてしょうがない。 → 感想

スクランブル・ウィザード

武装の最終確認、忘れ物無し。十郎は部屋を出ようとする。だがそのとき、背中越しに静かな声が掛けられた。 「違うの」 振り返ると、驚くほど強い感情を湛えた瞳がこちらを見つめていた。 「そうじゃない、私が怖いのは……先生のことなの。『みんな』には先生…