倉吹ともえ

沙漠の国の物語 かさなる輝跡

「あんたがいないと駄目だ」 本当に?もし都合のいい夢なら、どうせなら、もうちょっと聞きたい。 「あんたがいないと何も意味がない。あんたの傍にいたい。あんたが……」 どうしよう。もしかして本当に、これ以上の夢が、 「好きだ」 後手に回りながらも、大…

沙漠の国の物語 鋼の旋律

「彼女は自分で選んだんだ。守られることは望んでいない。心配するのはいいが、し過ぎるのはただの侮辱だぞ。お前はお前の仕事をしっかりやれ。それで次に会えたときには……」 言いながらゼクスはジゼットの頭を真上からガッと掴み、自分の方へ顔を向かせた。…

沙漠の国の物語 暗夜流々

「……ちょっと今から最高に格好悪いこと言うから、耳塞いでてくんない」 青々とした空から瞳を隠し、一つ息を吸って、ジゼットは声の震えを押し殺した。 「俺の代わりに、ラビサ頼む」 ふたりの間がギクシャクする中、ラビサに罠が仕掛けられて、どうなるかと…

沙漠の国の物語 あざなわれし者

「だったら離れなさい。あんたのためでもあるのよ」 一際強い口調でビッキは言い切った。 「あんたとジゼットは全然種類の違う人間よ。あんたが彼を追っ掛けて同じ町に来たみたいだけど、このまま傍にいたらお互い不幸なことになるわ。後悔する前に身を引き…

キャンディ・ポップ(2)

(人生で二回になっちゃうけど、着られてよかったな。似合うって、言われたし……) ヴェールの下で自分の髪を弄びながら、自然に顔がニヤけてしまっていた。 モデルになって良かった。きっとこんなことでもなければ、彼の前で着る機会など…… そこまで考え、唐…

沙漠の国の物語 眠れる望楼

「ラビサ、見たか」 その風景の一部であるかのように、ジゼットの囁く声が聞こえてきた。 「これが、あんたの父親があんたに見せたかった光景だ」 ラビサが過去から解き放たれていく過程は良かった。ジセットとの距離感は相変わらず素敵です。 → 感想

沙漠の国の物語 星のしるべ

「俺があんたのこと知りたいの、そんなに変?」 咄嗟に呼吸を止め、瞬きも忘れてラビサは彼を見上げる。 「傍にいない間、あんたがどうしてたか気になる。変か?」 ちょっと苛立ちを込めて僅かに細められた目が、真っ直ぐに自分を捉えていた。 「……別に、変……

キャンディ・ポップ

「よくわからない人ね、あなたって……」 気づけばぼんやりと呟いていた。 「黙って支えてくれたり、ひどいこと言ったり、自分で泣かせておいて慌てたり……」 「な!だ、誰が慌ててなど!」 元気な王女と、なまけものなカミさまの珍道中物語でした。サクっと読…

沙漠の国の物語 水面に咲く花

「でも、私はあなたのことを醜いとは思えない。ちっとも獣に見えない」 「……同情はやめて。安い言葉で慰められるのが一番腹立つわ」 「同情じゃなくて、本当にそう思うんだ。だって、獣は後悔しないよ、ファティ」 三者三様の心理描写が見事でした。ラビサと…

沙漠の国の物語 風はさらう

「ふさわしくない人間を選ぶのが仕事なら園丁なんていらない。選ばれた人間しか住めないなら聖地なんてやめればいい。怒りと憎しみがシムシムを枯らすというなら―」 「それよりももっと大きな力でシムシムを助ければいいじゃないか!」 過去の過ちを繰り返さ…

沙漠の国の物語 楽園の種子

「優しさは弱さかもしれないし無知は幸福かもしれない。でも私は、優しさで弱くなってしまうのは人が強いからだと思う。無知な私は確かに幸せだった。でも色々知った今はもっと幸せだと思う。知れてよかった。わたしはガヴルもこの町も好きだ。だから……」 素…