前田栄

天涯のパシュルーナ(4)

「だから、その『神の裁定』って何なんだよ?俺に何をやらせるつもりなんだ?」 「王族、巫女・巫士は、いわば神の眷属。人間が砂漠のは畏れ多いということで、罪があるかないか、その者の命運を神に委ねるのです」 「つまり『死ぬのが当然、生きていれば奇…

天涯のパシュルーナ(3)

「もし俺がアンタを守り切れたら、俺を第一王子候補から外してほしいんだ」 「は?」「え?」「なに?」 三者三様の声は出ていたが、全員に共通していたのは驚愕の色だ。 「ええと……君、第一王子候補なんだよね?」 折り返し地点。第一王子に選ばれたくない…

天涯のパシュルーナ(2)

「殿下、お気を付けて。これから殿下が向かわれる王宮には、ヒルクィットどののような人間がいっぱいいると思います。けっして油断なさらぬよう」 「ヒルクィットが……いっぱい……?」 「まあ、あの方よりは小者だとは思いますが」 「でも、いっぱい……」 子供…

死が二人を分かつまで(4)

「会えば解る。今までお前が謎だと思っていたこと。それが当然だと思っていたが、実際は違うことも、総て」 「当然だと思っていたけど、実際は違うこと……?」 「覚悟しておくのだな」 ヴァンパイアの真実が語られ、生と死が見えたお話しでした。ああ、だから…

死が二人を分かつまで(3)

「おまえならエリオット様を倒せるような気がしてきたぞ」 「……そんなわけないでしょ」 「いや。おまえ、なんか無敵な気がする。特に性格が」 ミカエラの不思議空間にやられまくった。やはりミカエラ最強だなあ。シリアスさをユーモラスにしてしまう天然っぷ…

死が二人を分かつまで(2)

「ヘルシングの一族は、人々を惑わし苦しめる闇の眷属を屠る力を持ち、総てを捨てて戦い続ける。何の褒賞も求めずに。君は、その血を持つことを誇りにしていい」 「誇りに?」 「ああ。君の体に流れているのは、あの御方に愛された一族の血だ」 J.C.の過去が…

死が二人を分かつまで(1)

「戦いに犠牲はつきものだ。いちいち気にしてたら、身が保たない」 「……あなた、本当にヘルシング?」 ヘルシング……それは、ヴァンパイアを狩ることを生業にしている一族の名だ。 「ヘルシング以外に聖句を操るものがいるとでも?」 ヴァンパイアハンター話…

天涯のパシュルーナ(1)

「お迎えにあがりました、王子」 「はぁ?」 予想外にもほどがある台詞に目を丸くしたトゥラルクに、貴族の青年は妙にうさんくさい笑みで続ける。 「あなた様こそまぎれもなく、十六年前に偽巫女によって攫われた第一王子」 「……おまえ、正気か?」 山賊とし…