前田珠子

隻腕の神の島 成就の章

「少年の気持ちは、わからないでもないけどね。人生の岐路なんてものは、誰の人生にも洩れなくついてくるもんだけど、あんたの場合は、それが他人より大きいそれだから。たまには立ち止まって、いろいろ考えるのもいいとは思うんだわ。実際、感情に忠実に、…

隻腕の神の島 壊落の章

「私は『夜の君』になってしまう……そうなれば、もう、外の世界のことに、口出しは許されなくなってしまうのだもの……だから、その前に……」 カーデューアを救い出さねばならない。 「頑張りなさい」 自分に向けて、彼女は叱咤する。 「頑張り、なさい」 ケイフ…

隻腕の神の島 闌干の章

こんなにも、自分は生きたいと思っている。願っている。体も心も病むことなく、ただひたすら真っ直ぐに、生きたいと……それだけを願っている。それが果たして許されることか否か、それはわからない。 それでも……。 生きたい……生きたいよ……。 カイダールがこん…

隻腕の神の島 彷徨の章

なぜそんなことを尋くのだ?問いかけて、ケイファスタンはまさか、と思った。 迂闊といえば、迂闊なことだ。 なぜ、こんなことを、相手が尋ねる必要があるというのだ、たったひとつの可能性を除いて、そんな必要はないではないか。 「出せる、のか……?」 殿…

隻腕の神の島 夢幻の章

「お前は馬鹿でお人好しでお節介だわ。私はそんなこと望んでないのに、勝手に身の上話なんて披露して……。お前の話と私の場合ではぜんぜん話が別だわ」 それでも、瞳から絶望の色はぬぐわれていた。 「お前ってわからないわ。まあ……少しは力が湧いたけれど………

隻腕の神の島 邂逅の章

「なんとしても、次の継承式は成功させないと……いいかげん、人に封印しなおさないと、ここままじゃあ……」 その先は、さすがに言わない。誰も、そんな恐ろしい可能性を口に出そうとはしない。それは世界の終焉を意味しているといっても過言ではないのだから。…