榊涼介

ガンパレード・マーチ 山口防衛戦 2

「……こわさや不安に心が曇っていると隙を見逃します。芝村さん、稽古は終わりです。わたくしの負け、と考えてくださってけっこうです」 「もういいのか?」 「すみません」謝りながらも壬生屋の表情は凛と引き締まっていた。 「言葉で謝るだけではあなたと生…

ガンパレード・マーチ 山口防衛戦

「わたくしは士魂号に乗れなくなったらただのお荷物なんです……」 石津はまっすぐに壬生屋を見つめた。 「壬生屋さんはいつだって……どんな時だって壬生屋さんなの。……心の傷は、みんなを守ってくれた勲章なの。きれいな……傷なの」 「そんなこと……」 「壬生屋…

ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常2

「狂っているのかな」厚志はぽつりとつぶやいた。 沈黙が続いた。舞は大木の根元に腕組みをしてたたずんでいた。風が舞のポニーテールを揺らす。舞は「ふっ」と短く笑った。 「自分なりの言葉を探していた。……そのことについてわたしは何も聞かぬ。たとえそ…

ガンパレード・マーチ もうひとつの撤退戦

「せっかくだから言ってやろう。おめーは軍人には向いていねえ。けどな、向いてねえならそれなりに何かをやろうとしたか?戦場ってのはな、ごまかしのきかねえ現実なんだよ。目を背けたってゴブの野郎は襲いかかってくる。こんなの嫌じゃ通らねえんだよ。考…

ガンパレード・マーチ あんたがたどこさ♪

そうか、そなたは逃げるのか。生死をともにしたわたしを見捨て、逃げるのか。わたしはそなたを真のパートナーと思っていた。信頼していたぞ。なれど、そなたは違ったらしい。裏切られたなどとは言わぬ。わたし自身が惨めになるだけだからな。なれど、なれど…

ガンパレード・マーチ 5121小隊 九州撤退戦 下

「負けるべくして負けた。わたしにはそれが悔しくてならんのだ。……政府の、そして軍の無能によって、負けるべくして負け、兵たちは死んでいった」 撤退戦の難しさと、それを乗り切った小隊の頑張りに涙 → 感想

ガンパレード・マーチ 5121小隊 九州撤退戦 上

「前方に友軍を発見しました。あの……なんだか変な感じです」 舞は我に返ると、通信に応えた。 「どういうことだ?」 「友軍同士が打ち合っているみたいです。ひどいっ!死者が出ていますっ!」 まさか、ここまで指揮系統がめちゃくちゃになってるとは……。自…

ガンパレード・マーチ episode TWO

「速水厚志」 「なに、芝村さん?」 「これからはわたしのことを舞と呼ぶがよい。手下も卒業だ。そなたはわたしの友だ。わたしはそなたを守ることにする。そなたもわたしを……守ってくれるか?」 仲間との、そして舞との出会いが、厚志を救ってくれたストーリ…

ガンパレード・マーチ episode ONE

「わたしは―」 舞が口を開いた。冷静なまなざしで三人を見る。 「あの訓練を生死を賭けた戦闘と考えた。それゆえに昨日の結果をぶざまと評した。 「だからぁ、あれはホンモノじゃねえだろ?」滝川がウンザリしたように言う。 「本物ではないから手を抜くのか…

ガンパレード・マーチ 5121小隊 熊本城決戦

「無茶……だよ」 「無茶だな。無茶すぎる!自衛軍だったら禁固刑ものだ。さすがにわたしも驚いたぞ。ふむ、敗北感すら抱いた」 「敗北感?」舞の口からは滅多に出ない単語だ。 「素人ゆえに信じられぬ馬鹿をする。その場の思いつきだけで後先のことを考えぬ。…

ガンパレード・マーチ 5121小隊 決戦前夜

これまで皆、よくやってきたと思う。この救いようのない戦争を、逃げずに、目を背けずに戦ってきた。神様がいるとしたら、彼らに報いてやって欲しい。どうか小隊が全員無事でありますように。何十年か経って、平穏な日常の中でわたし達が子や孫に、戦争の事…

ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常

「ヒトは幻獣を殺さねば生きられぬ。笑いながら殺そうが、泣きながら殺そうが、結果は同じだ。きれいごとを言って戦いから逃げるよりはましだろう。忘れるな。たとえそなたが何者であろうと、そなたの友はそなたと一緒に戦い、そなたを守る。そなたの友は最…