霜島ケイ

修羅の降る刻 封殺鬼シリーズ 8

「卑怯だと思うなら罵れ。怨みも怒りもすべて吐き出せ。全部聞いてやる」 「……雷電……?」 「その言葉を俺は忘れない。死ぬまで覚えていてやる。おまえの名も、おまえの顔も。俺がおまえにしてしまったこと、これからしようとしていること、何もかも全部、俺…

闇常世 封殺鬼シリーズ 7

神島桐子。当主であった時代には、茶吉尼と呼ばれた女。 人間の心臓を喰らう、鬼よりも魔そのものよりも冷酷な黒の女神の名を囁かれた専大当主。 わずか十になるやならずで、当代神島の当主の座にいた実の兄を呪殺し、その実権のすべてを握ったと言われてい…

紺青の怨鬼 封殺鬼シリーズ 6

「……行くな」 やがて漏れた、呟くように掠れた声に、三吾は思わず目をあげて弓生を凝視した。 冷たくなった聖を見おろしながら、まるで何も見ていないかのように。 「俺を、おいて、行くな」 ぽつり、と言葉を押し出して。 それきり、弓生は、口を閉ざした。…

邪神は嗤う 封殺鬼シリーズ 5

「九天地会の件に関してはくれぐれも勝手な行動は慎むよう、酒呑童子には伝えておくことだ」 「……彼の行動についての責任は私が負います」 弓生の声は低かった。 達彦は軽くうなずき、視線を庭園のほうに転じた。続く言葉は、ひどくもの柔らかに。 「言うま…

ぬばたまの呪歌 封殺鬼シリーズ 4

「―私ね」 佐穂子は足を止めると、聖を見上げた。 それまでずっと胸の中で繰り返していたことを、きっぱりとして口調で言った。 「鬼つかいになったら、あなたたちがイヤな思いをするような仕事なんか、絶対にさせない」 「――」 「私は必ず鬼つかいになるか…

朱の封印 封殺鬼シリーズ 3

「俺な、かんにん、って思た。みんなにな。ずっとかんんいんて思とったんやけど、あんまり長い間謝っとったから、いつの間にかもうええつもりになっとったんや。こんだけ謝ったら、あいつらも許してくれるやろ、て」 「―」 「けど、死んだヤツにしてみれば、…

妖面伝説 封殺鬼シリーズ 2

「心配か?」 たずね返され、聖は目線だけ動かして弓生を見た。 「二百年前と同じことを繰り返すのが心配か?」 「……」 「名前と顔が似ている。それだけだ。……彼女は、サホじゃない」 前作の続きのようで続きじゃなくて、でも面白かったです。これは続きが楽…

鬼族狩り 封殺鬼シリーズ 1

「なんで、そんなこと―」 「わかるさ」 弓生は冷ややかに遮った。 「同類はね」 「……。まさか、それって……」 「俺らも鬼なんや」 聖は相変わらず窓の外を眺めたまま、ぼそっと言った。 「前に言うたやろ。千年以上生きとるて」 鬼やら陰陽師やらが出てきてま…

カラクリ荘の異人たち 〜もしくは賽河原町奇談〜

「誰にもなんて言うのは、おまえの年では早すぎる。そういうことはあと六十年か七十年生きてから言え」 「そんなに生きられるかどうかわからないよ」 「生きるさ」 自信たっぷりに言って、彼女は微笑んだ。おぼろな記憶の中にあった、日溜りのようなあの微笑…