小野不由美

悪夢の棲む家 (下) ゴースト・ハント

「……でも、だって」 「麻衣、依頼者は誰だ?」 はっと麻衣は言葉に詰まる。 「守るべき人間を間違えるな。お前はプロだろう」 ナルによって見えてきた悲劇。ああ、これが悪夢なのか。慈愛と忿怒が絡み合う狂気が遣りきれない。いったんは解決したかに見えた…

悪夢の棲む家 (上) ゴースト・ハント

(姿見の向こうに……) ベースに向かって足を踏み出しながら、それは唐突に脳裏に浮かんだ。 (……コソリがいる……) ナルたちの相変わらずのやり取りにニヤニヤしてたら、背筋がゾクっとくる怖さにやられる。でも目が離せない面白さでした。いったん解いた謎が…

悪霊だってヘイキ!下

「さーて、帰るか」 ひっどーい。しくしく。ぼーさんまでー。 んでも、ぼーさんは車のほうに歩き出しながら、あたしの頭をぐしゃぐしゃかき混ぜてくれた。綾子にも真砂子にも背中を叩かれて。でもってジョンと安原さんの笑顔と、リンさんの縁起のいい微笑い…

悪霊だってヘイキ!上

「― 開かない」 「そんなはずございませんでしょう・たった今そこから ―」 真砂子の声に、あたちは首を振ってみせた。 「開かないの。あたしたち、閉じ込められたの」 ナルの様子が変だなあと思ってたら、すてきにホラーな展開になってきましたよ!これは下…

悪霊とよばないで

「だって『おこぶさま』って……」 「海から流れ着いた流木。形が仏像に似ているから祠を建ててこれを祀る。『えびす』だ。堂々たる『マレビト』だよ」 言ってぼーさんは苦い顔をする。 「綾子の忠告どおり寝てりゃよかった。俺たちは神サンを相手にしなきゃな…

悪霊になりたくない!

「まさか例の夢か?」 「うん。だと思う」 「どんな?」 思い出したくない。思い出そうとするだけで、血の臭いが漂ってくる気がする。 「あたしが殺される夢」 ここにきてレギュラー陣たちに気になるネタがでてきたなあ。それだけじゃなくて、本編もガリガリ…

悪霊はひとりぼっち

「ずるいっ!!」 「……は?」 キョトンとするナル。 「あたし、あやまろうと思ってたのにっ!先に言うなんて絶対にずるいっ!!」 「あのな……」 「ナルってば、そーやっていっつもオイシイとこばっかとってくっ!ずるーいっ!」 こんなやり方で霊を強めるとは!…

悪霊がいっぱいで眠れない

「冗談。ナルが優しかったら、この世は善人ばかり。天国みたいなもんだよぉ」 「そ……そうなの?」 「性格悪い、悪い。口は悪いし冷淡だし、おまけにナルシストで秘密主義」 笠井さんはあたしの顔をのぞきこむ。 「……でも好きなのね?」 ……うっ。あーうぅぅ。…

悪霊がホントにいっぱい!

「礼美ちゃん、お姉ちゃんのところに帰ろう!」 「おともだちが、あそぼ、っていうの」 「ダメよ、その子たちとは遊べないの」 「でも……」 煙が礼美ちゃんにまとわりつく。だんだん色が濃くなる。礼美ちゃんは立ちすくむ。 「礼美ちゃん!」 「みんながはな…

悪霊がいっぱい!?

「カメラの弁償をしてもらってもいいんだが……」 「弁償って、いかほど……」 渋谷氏がサラッと言ってくれたのは、とんでもない額だった。夢のような大金。 ……目の前が暗くなった。 「それがいやなら」 ……なんですか?弁償しないですむならなんでもするわっ!」…

過ぎる十七の春

春休み。毎年恒例の親戚の家へ向かった直樹と典子。 自然溢れる山の生活は、ユートピアのよう。 だが、時おり陰る表情を見せる伯母。 疲れたような表情を見せる従兄弟の隆。 「何かあったのか?」 「夜に……変な気配がするんだ」 そして次の日から、隆の態度…