若木未生

GLASS HEART グラスハート

「日が昇ったら、どっかの路上に行って、歌おうか。そしたらフルコーラス聴いてくれる?きみ感激して泣くんじゃないかな」 「泣かないよ」 意地を張った。 藤谷も向きになって、 「絶対に泣くよ!きみが泣くまで歌うのをやめない!」 つい最近コバルト版を読…

イデアマスター GLASS HEART

「あたしは、藤谷さんについていける人間なのを、自分で知ってるから、負けないよ!」 「いいよ。戦おうよ」 藤谷さんが言った。嬉しそうだった。全部、先生の思いどおりだから当然だけど。 笑ってる。 「きっと、すごく楽しいよ」 最後まで音楽で魅せてくれ…

熱の城 GLASS HEART

「桐哉はそういうふうに歌うの?」 藤谷さんが眉をひそめて訊いた。 「腹から喉から待った無しであふれてきたモンを歌うしかねえんだよ。オマエはまだ自分守ってんだ、おしとやかに壁に隠れてんだ、出てこいよ」 「今さ」 藤谷さんがまじめに見上げて、きき…

冒険者たち GLASS HEART

「つまり、ステージで力をセーブすることは考えていないわけですね」 「何のために?」 藤谷さんが真顔で答えた。 「不可能だよそんなこと」 全国ツアー物語。マネージャの源司さんがいい味出してるなあ。こういう人がいないとテン・ブランク回らない気がす…

AGE 楽園の涯 グラスハートex.

「……ただ、俺は、ギターが弾けていたらそれでよかったはずなんだ」 ぽつりと、こぼれるように、尚の声がした。 「それだけのことから始まったはずなんだ」 「……」 「世界中の誰が泣いたって……」 どうにもならないような衝動が、もどかしくも胸に響く。尚をこ…

いくつかの太陽 グラスハート(5)

「バッカじゃねえの」 何様?って桐哉が吐き出した。声が少し笑ってた。 「たぶん俺まだ死なないんだけど、何にしても永続的に音楽やろうよ」 真顔で、あたりまえみたいに、すぐ近くの桐哉のこと見返して、 「楽しいよ」 先生が言った。 ぐるぐると回る思い…

嵐が丘 グラスハート(4)

「おっかしいな、なんでみんな懲りないの?」 そんなん決まってるのになと思ったけど、理由、ちゃんと言葉にするのって難しかった。 (だって音がある) まだ鳴らしてない音が、そこにあるから。 (藤谷さんの) 歌が。 音楽じゃないところの、大人の事情や…

ムーン・シャイン グラスハート(3)

「あんたみたいに初めっから苦労しないでそういう仕掛け、できる人とは、誰も彼も同じって思うのやめてよ!!人がっ……自分の曲どんな風に扱うかとかっ……」 「そうだよ俺の方が天才だよ。だから何?」 反論するきっかけもなくなるくらい凄い一言を藤谷さんが、…

薔薇とダイナマイト グラスハート(2)

「……変だよね、好きなことやってるのに」 藤谷さんは少し苦笑いしたみたいだった。 「余計なものがたくさんあるよね」 「でもあたし、先生のそういう……」 何だろう。口が勝手に動いたから、意味を自分で考えてるヒマがなかった。 「先生の、そういう、真面目…

グラスハート

「だから、昨日、うちの母親に言われたんだけど。贅沢になりなさいって言うんだ、母親が。音楽がたのしいのはあたりまえなんだって、だけどそこで満足しないで贅沢にならなくっちゃって。あたし、その意味ってよくわかんなかったんだけど、だんだんわかって…