高殿円
「わたくしとスノウは一心同体。スノウを退学させるということは、すなわちわたくしを退学させるようなもの……」 「え……」 「つまり」 プリムローズは、まだ教壇に残ったまま、生徒の質問に応対していた担任のミス・プリズムにつうっと視線を流す。その瞬間、…
(俺は、……たしかに敵に勝った……) 父を打ち、若くしてアジェンセンの大公となり、先ほどもゴルゴット族を打ち破って、悠々とパールエルムに凱旋した――はずだった。 なのに、なのに、なぜ、 こんなにも敗北感に苛まれなければならないのか。 しかも、トイレ…
「へ……」 スノウは一瞬、自分の耳を疑った。いま、とんでもないことを聞いたような気がする。 (い、いま……お嬢様が、こ、こ、婚約って……) ルークの登場で凍り付いていたからだが、今度は全身が心臓になったみたいにばくばくと鼓動を打ち始める。 (お、お…
「忙しくなるなあ」 アイオリアはのんびりと背伸びをしながら言った。 愛は壊れやすいからこそ貴く、人はずっとと願う。 そして、人は去るからこそ、いっしょにいる今がこんなにも愛しいのだ。 最後までアイオリアはカッコよかった!もう、大好き。→ 感想
「たまごからは翼がうまれたんだ。きっとね」 「飛んでいくの?」 「いいや、人間は飛ぶことなんてできないよ。できるのは、歩くことだけだ。その翼はね、飛ぶんじゃなくて、心をほんの少しだけ軽くするんだよ」 最後には思わずじわりとさせられた最終巻でし…
「まだ、取り戻せる。この世に遅すぎることなど、なにもないはずだ」 「違う!!」 アイオリアは、突き放すようにして、彼の腕の中から抜け出した。 「……人間は、生まれ変わったり、なにかを幸福の引き換えにしたりできない。わたしたちは、不器用だから、幸…
「おまえが、かわいそうだ」 「ジャック……?」 「だって、そうだろ?たしかに人間はひとりぼっちで生まれてくるのかもしれない。何かを手に入れるために、努力し続けなければいけないのかもしれない。 けど、親の愛情だけは違う。それだけは、子供が無条件で…
「……教えてくれ。俺はどうすればいい?」 「ばかっ!」 アデラは綺麗な顔をくしゃくしゃにして叫んだ。 「笑ってないで、早く受け取りなさいよ!愛してるって……」 ガイが広げた腕の中へ、まっすぐに飛び込んだ。 「愛してるっていいなさいよ!」 どうしてど…
ことばには、重さがあるという。吹けば飛ぶような長演説もあれば、単純で重いひと言もある。エティエンヌのことばは、ジャックの心にずっしりと響いた。 「ひとを恨みたくありません。たとえ、じぶんが悪くなくても、どんなにひどいことをされても、恨みたく…
「じゃあ、アルフォンスがあのヘビ男と結婚しちゃってもいいんだ。ものわかりのいい侍従どのは、王家のためひいては民のために、涙をのんで身を引くわけだな」 キースが意地悪な質問を投げかける。 「……いいわけ、ないでしょう」 それはひどく素直な、男の感…
「そこへいくの?マウリシオ」 「いいえ、行きません」 彼はアルフォンスを地面に下ろして、その前にゆっくりと膝をついた。 「ずっと殿下のお側におりますよ。いつまでもいつまでも、この命がつきぬ限り、永遠に……」 そうして、小さなアルフォンスの手を取…
「たしかにおめえは王としては劣等生だったかもしれねえが、今は自分の非に気がついて困難に立ち向かおうとしている。それで十分じゃねえか。大切なのは正しいことじゃない、間違いを素直に認めることさ。それができなかったばっかりに英雄になれなかった者…
「嘘だ……」 「殿下、少し落ち着きなさい」 マシアスのたしなめも、もはや惑乱するルシードの耳になど入らない。 「だいたいなんで俺が、正妃に愛人を選んでもらわにゃならんのだーーーーっっ!!」 これは面白い。ミステリアスな展開に恋愛要素もある仮面夫…
「さよならだ、シラユキ=トオノ」 彼は、笑っていた。 「― なぜなら、向こうに帰るのは、君だけなのだから」 主人公たちよりも、サブな人たちのやり取りがたまらなく面白かった → 感想
「ほら、あの言い伝えよ。〝年があらたまる瞬間に、いっしょにいた人とは、新しい絆が芽生える……〟っていう……。あんたなんかといっしょにいて、損しちゃったわ」 「そ、そんな、デイジー……」 おろおろするピースに、デイジーは、そのつんけんした口調とは反…
「まあ、オレはスノウのものだからな。いついかなるときも離れてはならないのだ。ただか人間のだれかとは違う」 「まあぁ、犬が言いますこと」 ぱちっ、と両者の間で火花が散った……ような気がする。 「犬ではない。聖なる獣の白狼だ。目が悪いのかプリムロー…
「でも、無理かな。だれもわたしなんか好きになってくれないかも。ねえ、カーリー」 「そ、そんなことない!」 いきなり目の前でカーリーが勢いよく立ち上がったので、わたしはびっくりした。 「どうしたのカーリー?」 「い、いえ、なんでもないの……」 彼女…
「命は、長いことに意味があるんじゃない。短いことに意味があるんじゃない。 長いものがあり、短いものがあることに意味があるんだ。 それを感じられないのは、そういう貴様の魂が貧相だからだ」 シェアードワールド第三弾。ポリ白登場! → 感想
アニメのハウス名作劇場みたいな物語 →感想