榊一郎

神曲奏界ポリフォニカ チェイシング・クリムゾン

「このままだと―」 ペルセルテが両方の拳を握りしめて呻くように言った。 「この後『実は部屋をとってあるんだ』とか言って雪崩れ込むパターンですね……!」 「むう。ああ見えてあの小役人め、結構手慣れているらしい―なかなか手際がいい」 コーティカルテも…

神曲奏界ポリフォニカ クリムゾン S(3)

「どうして……」ペルセルテは喉の奥から絞り出すような声で言った。 「どうして先輩にそんな事が分かるんですか……」 それは反論ではなく純粋な疑問だった。 だがフォロンは直接に答えず、微苦笑を浮かべて問いを返す。 「どうしてペルセルテ―君にそんな事がわ…

模造王女騒動記 フェイク・フェイク エイリアン・ネイション

「特別親しい男女と言えば、まず妹たるこの私だろう!にゃんにゃんするならば先ず私であるべきではないか」 かなり激しく色々な点で間違っている感じだが、それを指摘する様な良識は周平にも薫子にも無かったりする。 それどころか駄目押しに、溜息混じりで…

神曲奏界ポリフォニカ クリムゾン S(2)

「そうだな。案外、ガキんちょもそこに惚れてんだろ?」 「うむ、そこがまた―……」 レンバルトの言葉に頷きかけて、はっとした様子で固まるコーティカルテ。 「そこがまた……なんだって?」 「矢、や、やかましい、だ、な、なん……だ、誰が、惚れ―いや、その前…

神曲奏界ポリフォニカ クリムゾン S(1)

「フォロン」 「は、はい?な、なに?」 思わず立ち止まって背筋を伸ばすフォロン。コーティカルテが妙に改まった口調で彼の名を読んだからである。 尊大な精霊の少女は決意を固める様に拳を握り締めて言った。 「お前には、その……と……特別にだな……私の事を…

神曲奏界ポリフォニカ エンディング・クリムゾン

「刃物の一撃、銃弾の一撃。それよりもたった一言で精霊を殺せる場合もある」 「……一言?」 「……あー、その、なんだ、例えば」 ごほんと咳払いをしてコーティカルテは言った。 「私を殺すのなんか、本当に簡単だぞ?」 「そうなの?」 「『お前なんて大嫌い…

神曲奏界ポリフォニカ ジェラス・クリムゾン

「だから、一番怖いのは――」 ユフィンリーは一口、アイス珈琲を飲んでから続けた。 「奏始曲が、自分が何を手にしているのかも全然理解できてないような、思慮の浅い馬鹿の手に渡ることか――」 「あるいは」 ヤーディオが欠伸をかみ殺しながら言った。 「この…

陰謀とその残骸のこと ディスパレイト!2

「まあこういう事」 時間にすれば三秒も無かっただろう。 「……コルバントさん」 「こういう時にするこっちゃないのは分かってるんだけどさ」 エニーネは頬が火照るのを自覚しながら、努めて軽い口調で言った。 「トルク。なんか、次に此処を出て行ったら、戻…

或る異生物使いのこと ディスパレイト!1

「まず自分の心配をしなさいよ!!」 「でもでも!」 思わずツッコミを入れたエニーネに、しかし奇妙な迫力を背負って猛然とテレ巣は反論した。 「ディスパレイトは異世界の生物だから、こっち側の空間で枠槽の外に出したら、長時間の活動はできないんですよ…

神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる 2

「わたくしとスノウは一心同体。スノウを退学させるということは、すなわちわたくしを退学させるようなもの……」 「え……」 「つまり」 プリムローズは、まだ教壇に残ったまま、生徒の質問に応対していた担任のミス・プリズムにつうっと視線を流す。その瞬間、…

模造王女騒動記 フェイク・フェイク ルナティック・シスター

「今『ドキ☆』とかしただろう!?」 「し……してね……」 「いいや、したね!俺の萌えゲージにぴぴっときたね!や〜いや〜い、匡平のむっつりスケベ!妹萌え!」 「だああ!!やかましいわッ!!」 「そんなに言うんだったら、俺がどんなに『兄らしい』か見せてやろ…

ディスパレイト!コンプ 02 落日の双銀

「よりにもよって―」 ダラスは白い手袋に包まれた手を握り締める。 「あれ程に何度も何度も何度も何度も!研究者たちが試み、出来なかったというのに―嗚呼よりにもよって、よりにもよって!こんな状況で目覚めるか―目覚めてしまったか!<異形の女王>……!」…

ディスパレイト!コンプ 01 昔日の双銀

「祭りは無くなってしまったけれど……!私は……!」 顔を上げたテレスは遠ざかっていく老人たちの背中に向けて声を張り上げた。 「私は歌を忘れない!」 おお、これは面白いシリアス展開。続きがすんごい楽しみ。→ 感想

神曲奏界ポリフォニカ ビギニング・クリムゾン

喜びを知っているからこそその喪失に狂うのだ。かつて己を満たした温もりに恋焦がれるからこそ、己の中に横たわる虚無を恐れ、正気を失う程に苦しむのだ。 それは人間も精霊も変わらない。 ならば ― 「彼女を助けてあげないと……!」 フォロンとコーティの出…

模造王女騒動記 フェイク・フェイク カーム・ブレイカー

「身の振り方が決まるまでは好きにしていいから」 「?身の振り方……?」 「居場所が ― 目的が見つかるまで、ここにいてもいいって言ってるんだよ」 「― それは本当か?」 パミルがぱっと微笑む。まるで太陽みたいだった。 その笑顔は― ただ純粋に可愛いと匡…

プリンセスはお年頃!3

「本当に、私で、いいの?」 耳が尖っていて。 尻尾があって。 眼が紫で。 髪が銀で。 こんなにも ― 別の何かで。 「何を言ってるんだかな」 呆れたように彼が言ってくる。 「お前が、いいんだよ」 この人の物語の軽さって、ほんといいですよね。 → 感想

神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる

「ほら、あの言い伝えよ。〝年があらたまる瞬間に、いっしょにいた人とは、新しい絆が芽生える……〟っていう……。あんたなんかといっしょにいて、損しちゃったわ」 「そ、そんな、デイジー……」 おろおろするピースに、デイジーは、そのつんけんした口調とは反…

神曲奏界ポリフォニカ ストラグル・クリムゾン

「判った。一緒にいこう」 決然と告げる神曲楽士の青年に、緋色の髪の旧い精霊は苦笑して見せた。 「当たり前だ」 苦笑が優しく溶ける。 「私とお前は……ずっと……一緒だ」 それは契約ではない。 それは ― 約束だった。 大人コーティの妖艶さが素敵 → 感想

プリンセスはお年頃!2

「だが、誰かを、何かを、信じることは、必ずしも無責任に縋り付くことではないぞ」 「……」 「時にそれは、勇気さえ必要だ」 「分かってる」 そう、分かっている。 分かっているからこそ彼はナナやバルテリクを尊敬している。 それは自分には出来ない事だか…

神曲奏界ポリフォニカ スパーティング・クリムゾン

「ふっふっふ……そーかい……そーくるかい…?」 フォロンとレンバルトは蒼白になった。ユフィンリーがこういう笑い方をする時はやばい。 「所長、あの落ち着いて」 フォロンの声もしかし彼女には届いている様子がない。 「いいよ。喧嘩売る気なら、買ったろうじ…

プリンセスはお年頃!1

「姫様は『第九派生人類』という事になります」 「それってつまり……?」 「つまり」 マヤカは一瞬眼を閉じ、覚悟を決めたかの様に瞼を開いて言った。 「俗称『淫魔』― サキュパスです」 潔癖症のサキュパスであるお姫様の婿探しの冒険 → 感想

神曲奏界ポリフォニカ ロマンティック・クリムゾン

「―フォロン」 ふと思い出したかの様にコーティカルテが声を掛けてくる。 言うべきことを言ったためか―既に彼女の声は眠そうに緩んでいた。 「一つ……言い忘れた」 「なに? 「……しようと思えば出来るんだからな」 「え……?」 前作よりも面白くなってきました…

神曲奏界ポリフォニカ ウェイワード・クリムゾン

微妙なようでわりと好きかも → 感想