三枝零一

ウィザーズ・ブレイン(7) 天の回廊(下)

『私の旅はここまでだが、この手紙が誰かの手に渡るのなら道は続いていると信じる。どうか、世界を。人間と魔法士が共に幸せに暮らす未来がどこかに必ずあると、私は願っている』 科学を信じて、危うい道を行きそうになるも、アリスという存在が彼を支えてく…

ウィザーズ・ブレイン(7) 天の回廊(中)

「はい。満場一致ということで」 ディスプレイの向こうでにっこり微笑む真昼。 「それではみなさん、仲良く悪巧みと行きましょう」 大気制御装置の秘密に迫るお話。すげー、まさかこの手詰まりの状態で、世界うんちゃらというはったりを効かせるとは……悪巧み…

ウィザーズ・ブレイン(7) 天の回廊(上)

「ゲームの参加者全員、誰もが、他の参加者を利用したつもりになっとるんだろう」 つぶやき、新しいタバコを取り出して火をつけ、 「ま、我々も他人を笑えた義理ではないがな。……己の策に足下をすくわれんよう、せいぜい気を付けるとしよう」 賢人会議がシテ…

ウィザーズ・ブレイン(6) 再会の天地(下)

「サクラもよく見ておくと良いよ。……この人は魔法士戦力なんか一切使わずに、自分の演説の力だけで、この状況を五分にまでひっくり返すつもりだから」 ニューデリーの未来を決する一日。マザーシステムの議論を目の当たりにして、錬を筆頭に目を逸らしてた人…

ウィザーズ・ブレイン(6) 再会の天地(中)

「考えなければいけません。……その間違いは、いつか、君の大切な誰かを不幸にします」 マザーシステム賛成派VS反対派という単純な形にならないから面白い。シティ・ニューデリーには悪いけれど、イルとサクラ、クレアとフィアとセラ、ディーと錬、そしてヘイ…

ウィザーズ・ブレイン(6) 再会の天地(上)

サクラとディーに対峙する、『予定外』の魔法士達。 赤髪の方は問題無い。だが、後の二人の存在は、さすがにどうしたものか。 ……どうしてこう間が悪いかな、あの子達は。 サバイバルナイフを眼前に構えて疾走する自分の弟の姿を見つめ、真昼は溜め息を吐いた…

ウィザーズ・ブレイン(5) 賢人の庭(下)

「だから ― この世界が私を認めないというのなら、私は喜んで世界の敵になろう」 犠牲を良しとするか、それとも居場所を作るか。二つの正義はどちらも間違っていないだけに迷うことだけれど、血まみれになりながら、ぼろぼろになりながら、それでも胸の内を…

ウィザーズ・ブレイン(5) 賢人の庭(上)

「今はまだ私一人だが、賛同する者はいずれ必ず現れる。今回のモスクワの件は手始め、最終的にはすべてのシティでマザーシステムの使用を止めさせる。私は―」 少女はディスプレイの向こうの天井を見上げ、息を吐き、その言葉を、ゆっくりと吐き出した。 「私…

ウィザーズ・ブレイン(4) 世界樹の街(下)

「どうせどっちに行っても間違ってるんだったら、自分のやりたいことをやれ。自分が間違ってることを忘れずに、失敗しても言い訳せずに、それさえ守れればそれでいい……ずっと前に、真昼兄がそう言ってた」 金色の前髪をかき上げ、ゆっくりと顔を寄せる。 「…

ウィザーズ・ブレイン(4) 世界樹の街(上)

「そういや、まだ肝心なこと聞いてなかったな」 弾みをつけて椅子から起き上がり、ヘイズは一つ指を鳴らした。 「結局、その世界樹ってのはなんなんだ?」 ゴーストハックつええ!でも使い手のエドは可愛いな。彼の面倒をみる錬のお兄さんっぷりが楽しい。そ…

ウィザーズ・ブレイン(3) 光使いの詩

「君がこの剣でどれだけのことを為したとしても、君の罪は決して消えない。君の剣はこれから先も数え切れないほどの命を奪い、悲しみを生むだろう。人は君を兵器と呼び、恐れるだろう」 祐一は、剣の柄をディーの手に握らせ、 「それでも戦え。罪も痛みも、…

ウィザーズ・ブレイン(2) 楽園の子どもたち

「で、信用できそう?」 「それは、まだなんとも。だけど……」 ルーティは少し言いよどみ、はにかみながら 「ああいうのを『いい人』っていうのよ、たぶん」 切なくて胸が痛い。空飛ぶ実験施設に潜り込んだ男が出会った少年少女達のお話しはとても楽しくて、…

ウィザーズ・ブレイン

「僕にできることは?」 「明日も、私と遊んでください」 「それだけ?本当に、それだけでいいの?」 「……本当は、もう一つ」 フィアはいつもと変わりのない、こぼれるような笑みを浮かべた。 「今ここで聞いたこと、私が話したこと……全部、忘れてください」…