冴木忍

星の大地(3)

「私は人間を愛していたんですよ。弱く、愚かで、ずるい人間を憎みながら、見捨てきれなかった……いっそ、憎んで見捨てられたら、どれだけ楽だったでしょうね」 ひどい……→ 感想

星の大地(2)

「はじめは人の幸せのためにあったんだよ。人が幸せになれるように、少しでも生活の助けになるように、そう願って先人は様々なものを生み出した。けれど、使い方が多様化するにつれ、悲劇も起きた。それでユハリシュの王は科学を封じたんだ」 独白のように言…

星の大地(1)

「ひとつだけ覚えているの。人の顔、それも物凄い美男子」 「それは予見で見たのですか?」 「たぶんね。でも、名前とか素性とかはわからないのよ。でもね、わたし、その人に会わなくてはならない。その人に会えば、自害した原因もわかる、そんな気がするの…

ドラモンド家の花嫁(1) 王宮は陰謀だらけ

「アルトゥース様、呪いはいつか消えますよ。始まったことは、必ず終わるんですから」 ジャスミンは慎ましく奥ゆかしい笑みを浮かべていた。落ち着いて淑女然としていて、空腹を訴える姿とはかけ離れており、アルトゥースを驚かせた。 「いいことも悪いこと…

思い出はいつまでも カイルロッドの苦難 9

カイルロッドの苦難 9"> 「そうか……。俺も恐ぇよ」 「……イルダーナフでも?」 「ああ、恐ぇ。だからな、どっかへ逃げちまいたい気もするんだが、そうなると寝覚めが良くねぇ。で、仕方なく踏み止まっているわけよ。何事もそんなもんさ。俺なんざ、その調子で…

やさしさは風の調べ カイルロッドの苦難 8

カイルロッドの苦難 8"> 「名前つけてくれる?」 「俺でいいの?大神官とか、ウルト・ヒケウとかの方がいいんじゃない?」 「ううん。……あなたに付けてほしいの」 どうしてもと言われ、カイルロッドは女の子の名前を考えた。が、なかなか出てこない。正確に…

微笑みはかろやかに カイルロッドの苦難 7

カイルロッドの苦難 7"> カイルロッドは腹を決めた。自分が生まれた理由を、もはや問うまい。 どんな思惑があったにせよ、今ここにいることがすべてなのだ。 「生まれた時に、おまえの運命は決まっていたのだろう」 憐れむような声をカイルロッドははねつけ…

悲しみは黄昏とともに カイルロッドの苦難 6

カイルロッドの苦難 6"> 「どうしてそんなことを言うの?」 「……カイルロッド王子のところへ行けば……あなたは辛い思いをすることになるわ」 敵か味方かわからない女だ。しかし、今、ミランシャを引きとめようとしているのは悪意からではなく、むしろミランシ…

野望は暗闇の奥で カイルロッドの苦難 5

カイルロッドの苦難 5"> 「つまりさ、俺たちは人を見る目を養わなくちゃいけないんだよ」 経験だけが、嘘と本当を見抜く力を磨くのだ。何回も何回も騙され、泣いて、自分に歯軋りをして、その力を磨くしかないと、カイルロッドは思った。 「なに?」 視線を…

面影は幻の彼方 カイルロッドの苦難 4

カイルロッドの苦難 4"> 「何故、そう言いきれます?何故、苦しみや憎しみよりも多くの喜びを得るとは考えてはいけませんの?」 華奢な少女がひどく大きく、強く見えた。 「わたくしはこの子に世界を見せてあげたいのです。美しい世界を」 「あなたは甘い、…

愁いは花園の中に カイルロッドの苦難 3

カイルロッドの苦難 3"> 「そうかぁ。あれは夢じゃなかったんだ」 少女は微笑んだ。何もかもを悟った瞳をして。 「……パムね。カイルロッドのこと大好きだよ」 「俺もパムのことが大好きだよ」 小さな身体を抱きしめ、カイルロッドは言った。 全米が泣いた、…

出会いは嵐の予感 カイルロッドの苦難 2

カイルロッドの苦難 2"> 目先の感傷に流されている自分の甘さを痛感し、肩をおとしてうなだれていると、イルダーナフの大きな手が背中を叩いた。 「優しさってのは美徳だが、人の上に立つ者は優しいだけじゃつとまらねぇ。そいつを覚えておきな」 そう言った…

旅立ちは突然に カイルロッドの苦難

カイルロッドの苦難"> 負けるな。現実をしっかり見据えて歩いていけ。どんなに苦しくても、それは自分で決着をつけねばならないことだ。もがき苦しみ、それでも自分の足で立って歩いて行くしかないのだ。負けるな、決して自分に負けるな、カイルロッドは心か…