森博嗣

目薬αで殺菌します

「干渉を望んでいる、というのは?」 「まあ、俗っぽくいえば……愛されたい」 「愛されたい?誰に、ですか?」 「さあ……」犀川は小さく一度だけ首を横にふった。「誰にというよりも、人類そのものにかも。彼女から見れば、たぶん、人類全体で一人なのじゃない…

銀河不動産の超越

「折り入って、高橋君に頼みがある」 「はあ……、何でしょうか?」 「君を男と見込んでだな、その、ここはなんとか、首を縦にふってもらいたい、どうかね?」 「いえ、どうかねと言われましても、その、どんな内容なのかを伺わないことには」 「男がそんな細…

タカイ×タカイ

「そうそう、人間の子供って、たかいたかいってすると、面白がるでしょう?怖がりませんよね。犬なんか、あんなことしたら、びっくりしますよ。人間って、どうして怖いのが好きなんでしょう?ジェットコースタとかもそうだし」 「これは大丈夫っていう理解力…

キラレ×キラレ

「満員電車って、昔からありましたよね。溢れんばかりに人が乗っている列車って、古いフィルムにもあります。屋根の上にまで乗っていたりとか、どこかの発展途上国でも、そんなのあるじゃないですか。だけど、都会はどんどん綺麗になって、住宅も綺麗になっ…

イナイ×イナイ

「今ので、チャラになった感じがする」小川は言った。「私、鷹知さんにお食事を奢りたいなあ」 「そんなあ……、今まで何のために頑張ってきたんですか、ぼくは」 「え?何のために頑張ってきたの?」 面白いと思うのに、普通すぎてつまらない気もする。萌絵が…

ηなのに夢のよう

「なんか、元気がないね」 「そんなことありません」 「そう?」 「ちょっと、月を見て、悲しくなってしまったの」 「今日は、月は出ていないだろう」 フロントガラスに顔を近づけた。見える範囲の空は真っ黒だった。 「そのようですね。さあ……」彼女は息を…

λに歯がない

「まいったなあ、被害者の身元がわからないってのが、一番困るんですよね」 「持ちものとかでも、わからないのですか?」 「ええ、ざっと調べたところでは、身元を示すようなものは、四人とも持っていませんでした。あ、そうそう、とにかく、歯がないんです…

カクレカラクリ

「こうして、見ているだけで和むだろう?」磯貝が言う。「手に取ってみたり、動かしたりすると、思わず微笑んでしまう。それがおもちゃの機能なんだ。日本にだって、昔からおもちゃは沢山あった。絡繰りの多くは、別に生活に直接役立つものではない。全部お…

フラッタ・リンツ・ライフ

渡り鳥になったら、ずっと飛んでいられるのだろうか。力の限り飛んでいられるのだろうか。飛べなくなれば、海へ落ちていく。それが本当の生き方だったのに、今では、落ちていくところは暖かい毛布の中。心地よ良い睡眠。 毎朝起きると、今日も飛べない、と思…

εに誓って

「美しい?」 「そう、生と死の狭間が美しい。その境界だけが、朝日や夕日のように特別に輝く」 「何故でしょうか?」 「わかりません」彼女は微笑んだ。「わからないから美しいのよ。生きてしまえば、ただの生きもの、死んでしまえば、ただの物体。でも、そ…

レタス・フライ LETTEUCE FRY

絶品のショートショートを含む9編からなる短編集 → 感想

スカイ・クロラ

間違いなく森博嗣の最高傑作 → 感想

τになるまで待って

山吹、加部屋、海月の三人は、資料調査のバイトをすることになった。 場所は森の奥深くにある伽羅離館と呼ばれる別荘。そこにはひとりの超能力者が住んでいた。 彼が見せた異世界へ通じる扉。同じ部屋にいるはずなのに、お互いの姿が見えない。 何らかのトリ…

ダウン・ツ・ヘヴン

行こう。綺麗に戦おう。 それだけを願い、打ち墜とす。 飛べるだけで満足だった。 でも、会社はそう思わなくなってきた。 「君はもう普通のパイロットではない。我が社にとって・・・・・・」 「何ですか?」 「兵器」 僕は一瞬で理解して頷いた。そのとおり…

θ(シータ)は遊んでくれたよ

ビルの屋上から飛び降りた人。 その額には赤い口紅で、第三の眼のような模様が書かれていた。 いや、眼というよりは、それを九十度回転させた形。まるで「θ」というマークのように。 調査をした警察はそれを自殺と判断した。 その後、書かれている場所は違う…

どきどきフェノメノン 【amazon】

窪井佳那は大学院生。 まじめで研究に没頭しているが、妙な趣味がある。 それは「どきどき」すること。 講座の後輩の鷹野と水谷。 指導教官の相澤。父の友人武蔵坊。 刺激を求めて、それぞれに対してちょっとした小細工を仕掛けることがある。 佳那を一番ど…

工学部・水柿助教授の逡巡 [amazon][bk1]

物語の形式をした自伝的エッセイ(と勝手に思っている)。 今回は小説家としてデビューしたというぐらいまでの物語。今後あるかどうかわからんが。 軽い感じで含み笑いしまくりの内容。間違っても外で読んではいけません。通報されちゃいますから。 布団の中…

φは壊れたね

これは項目を別にしてか書かないと。 鍵は自分があけた。窓は閉まっている。なのに、その部屋には男性が宙吊りにされて刺し殺されていた。 いったいどうやって・・・。 帯に書かれた煽り文句を読んだら「犀川シリーズか?」と思ってしまいましたが、残念なが…

ナ・バ・テア [amazon]

もうね、はじめの1ページを読んだだけでわかりました。 傑作、それも大傑作だと。 これ以上言うことはありません。

四季 冬

四部作の最後を飾る作品。前三作までは四季にかかわり合う人も含めて、四季という人物が描かれていましたが、今回は四季の一人舞台と言ってもいいでしょう。その心が、四季本人の思考(他人格の思考も)から明らかにされていく。まるで詩のように。 その中で…

四季 秋

読了。我ながら早いなあ。 今回は「四季」の題名が着いているものの犀川・萌絵が中心。 やはりこのふたりのからみは面白い。 意外な事実が発覚したり(まさかあんなことがねぇ)、意外な展開 だったりと面白さ満点。たぶん三日間は機嫌がいいでしょう。 4月…