杉原智則
「おれは、確かに一度は逃げたのだ。あらゆることから――皇帝から、メフィウスから、ガーベラやエンデのことから、そして姫、あなたからも」 「――」 「しかし、おれをここへと呼び戻したのも姫だ」 ギルとしてカムバックする姿が格好よくて、このまま順調に行…
「忘れたか、オルバ。きみはメフィウス人だ。そして、いまタウーリアが戦っている敵もメフィウスなんだ」 その指摘に、オルバは身動きを止めた。 「そんあ時勢に、きみが勝手に動けばどうなる」 オルバが厳しい道を選んだことに大興奮。手紙だけでゾクッとき…
「あなたはどうですか」 ビリーナは問うた。 「皇子は、本当に亡くなられたと、そうお考えですか」 「わたしは」 口を開いて数秒。 「......彼の死骸を、この目で見たわけではない」 ビリーナがようやく!それにしても、こういう形でオルバが戦いに挑むこと…
「きみならもっとうまくやると思ったが。スルールから隊丸ごと奪うつもりならともかく」 「性質が悪い」 「ぼくが?それともきみが?」 「使えない将は、手ごわい敵より性質が悪い」 一介の兵士となったことで出来ないことの多さに苛立ちながらも頭角を現す…
(思えばこの六年、おれの心臓は、オーバリーを殺すためだけに鼓動を打っていた) (その目標もないいま、いったいおれの血は何のために流れて、おれは何のために眠り、何のために明日を迎えるのか) 第二部。オルバはタウーリアの傭兵に。目標を無くして苛…
「王女」 「は、はい」 なぜかこうして正面から向き合うと、ビリーナの小さな胸がざわめいた。しかし、視線だけは逃げずに、ギルのそrを重ね合わせる。 「そのまっすぐさを、失わずにいてほしい。たとえこの先、どんなことがあろうとも」 復讐か責任か。偽…
「ぼくはもう、彼の言うこと為すことにいちいち驚かないことにしましたよ。それこそ慣れておかないと、具合を悪くするだけなのでね」 笑みで同意を示しながら、しかしゴーウェンは、オルバの駆け去ったあたりをあたりを遠い目つきで見やった。 「慣れ、だけ…
(剣闘士としては、姫と友人になど吊り合わぬと思い) (奴隷としては、姫が奴隷の境遇を知るようなことを言うのに耐え切れず) (皇子としては、目的を果たすためになら、オルバひとりの犠牲など構いはしないとさえ思っている) 「おれは、誰だ」 二つの顔を使い…
(こんな男だからこそ、あるいは、わたしの意のままに躾けることができるかもしれない) 皇太子を操ることができるのならば、いずれはこの国の動きそのものも裏でこっそり糸を引くことができる。 (お爺さまの言われたとおりだ。これも戦いなのだ。血を流さ…
その〝言葉〟をぼくたちは そう、〝絆〟と呼ぶのだ。 それこそが、孤独と対なる唯一の〝言葉〟 まさか、こんなに感動させられるとは思ってもいませんでした。→ 感想
兄は懐かしそうにそのときの思い出をしゃべっていたが、ぼくはろくに聞いちゃいなかった。何だってぼくはあんな妙な名前の呼び方をしたんだ?何か忘れているぞ、というあのときの謎の警告がふたたびぼくを悩ませる。 そうだ、僕は確実に何かを忘れている。 …
(おまえは誰だ?) いく度となくそう訊いてきた。 (おまえは) (誰だ?) ぼくのほうこそ。ぼくこそ、訊きたい。おまえは誰だ。おまえは誰だ。おまえは誰だ。 おまえは― いやあ、すごかったです。ほんと。→ 感想
葵はぼくに何度も「ありがとう」と礼を言った。白い肌は血の色に紅潮し、息は絶え間なく弾んでいる。黒目がちの瞳はうっすらと潤い、痛みさえ忘れてぼくは見入るほどだった。もちろん彼女は平静ではなかったし、本心からぼくの身を心配してくれてはいたろう…
「だって、わたしだって、レントンといたいもの。信じれば、きっと願いはかなうわ。えわたし、信じることができるよ。またレントンに会えるって、こんなにも信じてる。ねえ、レントンは?わたしを、信じてくれる?」 「そんな言い方、ずるいよ」レントンは涙…
ホランド、とタルホに呼びかけられ、彼は顔を上げた。そして、 「不可能だと?」 そう言った。 「おれを誰だと思っている。ホランドだぜ」 絶望からの希望を描くシリーズ第三弾 → 感想
「きみは、確かに他の人とは違うよ」そっと手を握っていった。 「だって、いつでも、おれにとっては特別なんだから」 コーラリアンとは?セヴンスウェルとは?ボリュームたっぷり、魅力たっぷりなシリーズ第二弾 → 感想