渡海奈穂

侯爵令嬢の持参金 -恋の話は妖精の庭で-

「いいか、俺は隠しごとはするが嘘はつかない。そういう血筋だ」 (……どういう血筋?) 「愛人も浮気相手もいない。あんた以外に結婚したい女もいない。それは信じろ」 しっかり者なお嬢様が、だめな男に惑わされていく姿が、なんとも楽しい。って、こういう…

死にたい騎士の不運<アンラッキー>

「教えてよ、グランツさん、どうやったら俺は、あなたがあなたの王を愛したみたいに、誰かのことを愛せるの。どうやったら俺は一人じゃなくなるの。誰も俺のことを見てくれない世界で、どうやったら平気で生きていけるんだ。お願いだから俺に教えて」 背負う…

夜の王子と魔法の花

「おまえは一体、何なんだ。おかしなことばかり言って……」 「おかしなことって何よ」 「……僕のことが、大事、だとか」 「大事よ。大事じゃいけないの?……言われるの、嫌?」 餌付けは重要。異なる世界の男の子と女の子の出会いは、とにかく可愛かった。戸惑…

失恋竜と契約の花嫁 誓いのキスをもう一度

「何やってんだ、俺は?」 我ながらどうかしている。 (あのチビが、あんな急に……あんな姿で現れて、驚かすから悪いんだ。チビの分際で) 最終巻でも失恋竜だったりしますが、最後はみんなでハッピーエンドでした。フィーナとラースの、甘い甘いやり取りを目…

失恋竜と契約の花嫁 この世界の誰よりも

「ひとつだけ教えてあげるね。どんなに辛くても、悲しくても、乗り越えることができるって、あたしは知ってる。そういうふうにできてるんだよ」 (……人とか……魔族が?) ううん、と、彼女が、首を振るような気配。 「初めからそうなわけじゃない。相手を信じ…

ダブル・エンゲージ 偽りの姫は、騎士と踊る

(わたくしが、エフィを……だなんて) ただでさえ許されるはずのない想い。 許されるはずのない恋。 (言えるはずがない……) 国を追われた姫と護衛の女騎士のお話。お互い大事に思ってるのに、自分が負担になってると思い込んで、遠ざけようとして、近くにい…

ダブル・エンゲージ 企む王子は殺し屋と踊る

「絶対に、今度こそおまえを殺さないといけないのに……なんでいつもいつもいつもいつも失敗するんだ……もう覚悟は決めたのに、仲間のためにも、必ず殺すって……」 「まあそうしょげるな。惚れた相手をそうそう手にかけられるもんじゃないだろ」 「だからッ、そ…

失恋竜と契約の花嫁 とまどいのキス

「……おっさんの魔族の涙なんて心底からどうでもいいけど、若くて美人になる限りない可能性を秘めている魔女を殺されるのは、将来の俺にとっての莫大な損失だな」 「おまけに彼女はフィーナの友達よ、仲よしが死んだりしたら、あんたの妹はさんざんn泣いて可…

失恋竜と契約の花嫁 指先から恋の魔法

「君も、僕と一緒に考えてほしい。僕はまだ子供で、君もまだ幼くて、わからなくて逃げ出したいこともたくさんあるだろうけど、でも僕は君と共に歩みたい。この先ずっと、そばにいるって約束しただろう?」 真面目なラースと幼いフィーナの「好き」がとてもも…

失恋竜と契約の花嫁 恋をせずにはいられない

「何でまた泣くんだ?」 「ち、違うの……泣きたいんじゃないけど、悲しいとかじゃないんだけど……あのね、フィーナね、ラースといると、嬉しい……」 言葉を抑えきれずに言ったフィーナに、ラースが面食らった様子で目を見開いた。 「嬉しくて、胸がどきどきする…

失恋竜と契約の花嫁 幸運の星めぐり

「別に俺は好きこのんで後をつけるような真似をしたわけでは―」 不機嫌な声で、どこか言い訳がましい口調になりながら言ったメリルが、途中でその言葉を呑み込んで、今度は小さく舌打ちした。 「さっさと用事をすませて、家に戻るぞ。おまえが俺以外の……百歩…

失恋竜と契約の花嫁 永遠の約束

新しい、もっとしっかりした体を作って、そこに魂を移せば、スウェナは生き延びるだろう。 でもそれでは、何の意味も無い。 「あなたとあなたの子供を失って、どれでどうやって生きてけばいいって思うの?」 ああ、なんとゴロゴロしたくなるお話なんでしょう…

失恋竜と契約の花嫁

(俺が守らなくては、、あの娘は死んでしまうかもしれない) 無意識のうちにそんな思いを胸に浮かべてから、メリルは、愕然とした。 (守る、だと……?) この自分が、他の誰かを、よりによって人間なんかを、守りたいだなんて。 (気でもふれたのか、俺は) …

ソフィアの宝石 ―乙女は、彼に誘われる―

「守ると決めたから、かならず守る。……守らせてくれ」 「……」 我慢しきれず、リディアの相貌から涙がこぼれ落ちてしまう。 (……どうしよう……嬉しい) 優しくはない。けれどいつものようにぶっきらぼうじゃないスレイドルの真剣な声に、胸がいっぱいになって…

ソフィアの宝石 ―乙女は、謡う―

「……リディア、君を好きになればよかった」 「駄目よ、その気もないのに口説こうとしたって、すぐにわかるんだから。いつもそうでしょ」 「君となら同じものを見られるんじゃないかって、そう思う気持ちは本当だよ」 「でも、恋って、そういうものじゃないん…

ソフィアの宝石 ―乙女は、降り立つ―

「でもファル、あたしに声をかけてくれたじゃない」 また顔を覆ってしまったファリカの両肩に手を置いて、リディアはなるべく優しい声になるよう願いながら言った。 「あたしと友達になりたいって思って、よりによって、周りがこっそり避けてるあたしに自分…