宇津田晴

ご主人様はご機嫌ななめ

「待ちなさいパミーナ、やけになっちゃいけないよ!」 「もう他に方法がないの。私、あんな卑怯な男の後妻になるくらいなら―悪魔にだって、仕えてみせるわ!」 楽しかったー!読んでて頬が緩むのを止めることが出来なかった。追い出すためいびるご主人様と、…

レディ・マリアーヌの恋人

「なるほど……だが、残念だったな」 譲らない強い決意を込めて、ロベルトはカイルに告げた。 「俺は虫除けや、偽りの恋人では終わらん。あいつに一番近い男の座も、奪ってみせる」 ニヤニヤが止まらない。ロベルトの甘い言葉に浮かれそうになるたびに、マリア…

レディ・マリアーヌの秘密

「最低です、ロベルト様っ。ふしだらです。不潔です。こんな風にべたべた触って。お嫁に行けなくなったらどうするんですか!」 「だから、俺のところに来れば良いだろう。なんの問題もない」 「一生下僕だなんてごめんです!」 「なんでそうなるんだ……」 こ…

花姫恋芝居 夜空に咲いた恋花火

「そんな、あれは、約束なんかじゃ……」 「約束だったさ、少なくとも、あいつにとってはな」 親方も、まだ信じ切れない彼女へ語りかけた。 「門前払いされても、邪魔だと怒鳴られても、あんたのために花火を打ち上げたいと、この工房に通い続けたあいつの気持…

花姫恋芝居 誤解しあうも互いの縁

「碧天に、もっともっと好きになってもらいたい。だからわたくしはこれから、照れずに、自分の気持ちをありのままぶつけていくぞ!」 「今以上に素直になられても困るし、今以上に好きになったら、俺の心臓がもたん」 「何を言う。わたくしの心臓のほうが、…

花姫恋芝居 美姫と二人の覇王

「信じるという言葉の意味を、間違えるな。そして、自分に嘘をつくのだけは止めろ」 責めるのではなく、励ますように言われたその言葉に、胸がきりきりと痛む。 「真実から目をそらさず、お前が一番大切に思うことは何か、もう一度よく思い出せ」 芝居を見た…

花姫恋芝居 恋の試練と白い玉

「香琴、痛い思いさせてごめん」 「いや、お主のせいではない」 「お詫びに、この報復はきっちり百三倍にして返すから、安心してね」 不穏な目をした弟に、香琴はなんだか嫌な予感を覚えながら、小声で提案しておく。 「中途半端な上に多すぎるから、せめて…

花姫恋芝居 白蛇に届け恋の笛

「なあ、碧天」 「駄目だ。梅香の家までこのままだ」 「では、このドキドキがどうやったら治るか、教えてくれ」 ああ、もうふたりっきりになったときのドキドキ感がたまらない。恋だね!こうなったら男も女もないよなあ。初々しいふたりを見守りたくなる。相…

花姫恋芝居 恋と正義が姫の道

「怪我をするのは嫌だが、わたくしの身の回りで困っている人がいたら、その相手のために何かをしたいと思うのは、当たり前のことだろう。関わるのは危険だと見て見ぬふりをすることは、わたくしにはできぬっ」 ついさっき怖い思いをしたばかりなのだから、男…

珠華繚乱 天山に咲く華

「あと一つ、良いことを教えてあげよう。あんた彼と喧嘩したんなら、ちゃんと仲直りの印を忘れずにやるこった。あれさえやれば、喧嘩なんて一発で忘れて仲直りだからねぇ。みんなやってる方法なんだけど、あんたは知らないんじゃないかい?」 「は、はい。仲…

珠華繚乱

「父上。たとえ珠家が成り上がりのにわか王族だとはいえ、一応王族になった以上、私にも覚悟はありますよ。もちろん必要とあれば、政略結婚の一つや二つや三つや四つくらいは、笑ってこなしてみあせますとも」 「うむ。その心意気、王として心から嬉しく思う…