竹宮ゆゆこ

ゴールデンタイム(3) 仮面舞踏会

「一度言いそびれた言葉って、なぜかどんどん毒素を出すんだよ。なんてことない話でも、貯めておくと有害になるの。時間が経つほど、やばくなる。なんでもさらーっと言えれば、それが一番マシなんだ」 感情なんてものは、すっきり線が引けるものじゃないから…

ゴールデンタイム(2) 答えはYES

しかし万里の胸は、これまでのどんな瞬間よりも、どんな顔の加賀香子を見たときよりも、強く締めつけられたのだ。何ごともなかったふりで、一応笑い返しはした。 本当に友達でいるのなら、あってはならない痛みだ。 なんて甘酸っぱいんだろう。振られた相手…

ゴールデンタイム(1) 春にしてブラックアウト

「光央のためだったの」継いだ声は独り言みたいなひそやかさで響いたが、 「……九割はね」 香子は再び顔を上げた。万里の目を見る。 「残りの一割は……自分でもわからないよ」 面白かった!大学生活の始まりというワクワク感と不安を描きながら、他人の恋騒動…

とらドラ・スピンオフ(3)! 俺の弁当を見てくれ

「りゅ、う、じ」 「……な、なに……?」 「……ただ呼んだだけ。顔、見せてくれないんだもん」 変な短編ばかりだったけれど、「にせトラ」の大河に萌えて、「ラーメン食いたい透明人間」の青春物語にやられました。→ 感想

とらドラ10!

「わかんねえのかよ!?それが本当にわかんねえのか!?」 夜空に星はなく、道を導く星座も見えない。自分がどこにいるのかもわからない。ただここには、この腕の中には彼女がいる。彼女があるところに自分はいる。 それだけがたった一つ確かで。 「俺がいる場所…

とらドラ・スピンオフ(2)! 虎、肥ゆる秋

「ち、違う!わけがるのよこれには!」 違わない。わけなどない。スカートのホックが留まっていない。ファスナーが閉じていない。きちんとウエストがしまっていない。 「夏服と同じサイズで作ったから、ほら冬は下に着込むじゃない?だからきつくなって当然…

とらドラ9!

「忘れたいのに忘れられないのはね、」 ぽくっ、と実乃梨の拳が、ちょっと荒っぽく伏せた竜児のツラの頬を真横からつつく。 「忘れたい、って思ってる時点で、すでに忘れられないことなんだから当たり前なんだよ。忘れてしまえるようなことだったら、人間そ…

とらドラ8!

「じゃあ教えてやろう。そう信じるに足る理由が、私の中に、あるからよ」 そう言った。たった、それだけ。 「つまり、私は『あんた』を信じてるの。あんたは、みのりんが恋をするにふさわしい人間だって。それだけの理由がある人間だって」 恋するって辛いな…

とらドラ7!

「……だから、パパ役なんてやってる覚えはねえっていうんだよ」 「なに言ってんの?思いっきりやってんじゃん」 目を逸らせても、顎を掴む手は払いのけられても、亜美の声からは逃れられない。 「高須くんとタイガーの関係は、すっごい不自然。すっげえ変。こ…

とらドラ6!

「踏み出したい一歩が、あるんだろ!?あるから迷うんだろ!?そんなもんがねえ奴は、そもそも行こうかどうしようかなんて迷わなねえよ!行きたい方向が、そんな先が見えてるからビビるんだ!それはてめえが一番わかってんだろうが!とっくに、てめえの腹は決ま…

とらドラ5!

「俺も、変わりてえよ。どうすりゃいい?川嶋は、どう思う?」 「甘えんじゃないよ。自分で考えな」 振り返った顔には、見慣れた意地の悪そうな笑みが張りついている。 「あたしはね、たとえば手乗りタイガーみたいに、べったりと高須くんと一体になったいり…

とらドラ・スピンオフ! 幸福の桜色トルネード

緊張して、意識して、照れて、拗ねて ― あまりにも不器用な恋だった。煮詰まって戸惑って、見失いかけるところだった。 たった一つ、忘れちゃいけないことがあったのに。どんなにヘタクソな恋だとしても、これだけは忘れちゃいけなかった。それは「君が好き…

とらドラ4!

「ドジっこだな〜たきゃすきゅんは。かわいいやっちゃ」 無防備な笑顔を蕩けさせ、唐突に実乃梨はそんなことを言い出すのだ。「〜〜〜〜〜っ」と竜児は絶句し、顔が火を噴くのも見られたくなくて、もてあそばれている気分にもなって 「……いて」 実乃梨の肩を…

とらドラ3!

「大河……おまえ……もしかして……」 「い、いや………いや!言わないで……それ以上言わないで……」 怯えた目をした大河は胸の前でしっかりカーディガンをかきあわせ、すがるように竜児を見上げる。 言葉には、言葉にだけはしてくれるなと。 だが、言わなければなるま…

とらドラ2!

「……まあ、いいわ」 神経質に光っていた目は酷薄な笑みに溶けたようになり、竜児へと向けられる。 「相手にするのも下らないか。そのうちわかるんじゃない?鈍いあんたにも」 「……なにがだよ」 「私、こういうことには結構鼻が利くの。一応ひとつだけヒント…

とらドラ!

気恥ずかしさ全開のラブコメ → 感想

わたしたちの田村くん 2

「相馬さんって誰?」 松澤の問いに返す言葉が思い浮かばない。 揺れる心。だが、相馬はいつも通りに接してくる。 心が苦しい。いつも通りに接することができない。 自分は何をしているのか。誰を求めているのか。 毎日のように悩む日々。 そんなとき、陸上…

わたしたちの田村くん

秀才な兄(モテ)とスポーツ万能な弟(モテ)に挟まれた地味な俺(非モテ)。 高校受験を控えた夏。友人の高浦が言った。 中学生活最後の夏をどうすごすか。 クラス委員である奴の情報。それはクラスで誰と誰が付き合っているかを示した表。 自分は明らかに…