響野夏菜
「あなたは、どんな憎まれ口を叩こうと、すねようと、怒ろうとかわいいですから」 「あなたにとっては、でしょう」 「何か不服ですか。好いた人に好かれる。それ以上のしあわせがあるとでも?」 短編小説+漫画が収録されてる短編集。ああ楽しい。漫画になる…
「まかり間違っても、どんなにしんぼうたまらんな状態になっても、けっして早まったことはなさいませんように」 厳命にふたりはうなずいた。が、話はそこで終わりではなかった。 「万一を考え、できるだけ気持ちを高ぶらせないようにしたほうがよろしいでし…
「本当は、もうだいぶ前から考えていたことなのですが」 ゼルイークは言った。 「わたしは魔法使いをやめようと思います」 いくつかの話がトントン拍子に進んでいきましたが、いやあ、ラストが良かった。こんちくしょうという言葉に、ご馳走様でした→ 感想
「わたしは、生きる者のために死者を呼ぶんだ。未来へ歩いてゆけるように」 すぐ傍にいながら届かない距離という思いも、随所に感じられてきゅんとなる。生者と死者を橋渡しすることで、生きる力を呼び起こす一族が、武力によって勢力を伸ばしてきた一族と出…
「けれどね、エルレインさま。わたくしはアレックスの母親でもあるの。だからこうなった今、お願いするためにあなたを呼んだの。アレックスは、長くはもたないかもしれない」 エヴィータの瞳の奥で、隠しきれない感情が揺れた。 「エルレインさま。考え直し…
「予言もしてはいけませんか」 気がつくとエルレインはそう言っていた。自分がここを離れたらと思うと、急にたまらなくなった。ゼルイークには孤独の陰がつきまとっている。 「はあ?俺のことをか?人の名を明かさずに言えるなら言ってみろ」 「あなたは恋に…
「たとえ神々に踊らされているんだとしても、わたしは進む道を自分で決めたって思いたい。だってそうでしょ?じゃなけりゃ、生きている意味なんてないよ」 うーん、どうにも感情移入しづらい展開だったなー。みんなで幸せにと言うミーナの思いはよくわかるん…
「すべて、わたしが間違っておりました」 何が?と誰もが思った。幾人かが毒舌を吐くかまえを見せる。 だが、それは果たされなかった。続いた言葉は、あまりにも衝撃的だった。 「どうかお許し下さい。わたしはエルレインとの婚約を解消いたします」 アレク…
それでも、彼らのやり取りはミーナの心に刺のように刺さった。 妖魔と、女神に仕えるパラデール教団。 どちらもがそれぞれ訊いた。 ミーナをどう思っているか。と。 先輩に嫉妬する兄弟にニヤニヤしましたが、母についての話が明かされてからの展開は、複雑…
もし。もし。もし。ぐるぐると回る言葉を閉め出して、エルレインはもう一度、震える声でうなずいた。 「はい」 信じたいから。願いたいから。 これが魔法使いとの「さよなら」ではないと……。 揺れ動く様に切なさを感じていたけれど、まさか最後に……さよなら…
「そんなに憂鬱でしたか」 「だって。現実が肩にずっしりじゃないですか」 「憂鬱の味を少々知るのも悪くありません」 ゼルイークの突拍子もない発言に、エルレインは眉をひそめた。問う前に答えが返る。 「憂いは人を美しくしますからね。どうりでお綺麗に…
「望む結果が得られるとは限らないんですよ?」 ミーナはにっこりした。 「ええ、それはもちろん」 「そのにっこりは『だからって諦めてなるものか』に見えるよ。やれやれ」 新米司祭のミーナの気の強さがとても楽しい。曰くありげな伯爵達を相手どる姿にニ…
「魔法は、恵みじゃないんですか」 「恵みです。けれどいつもそよ風を運んでくるわけじゃない」 「時として嵐になると言いたいのですか」 「そうです。誰かの幸せは別の誰かの不幸せだったりするでしょう?同じように魔法も、人のさだめも幾重にも重なり、つ…
「フェイドルンさあ。ドードーの鐘、とは何ですの?」 レシータは尋ねた。この前にも尋ねたが、答えは得られていない。 彼の答えは、明快だった。 「生贄山羊の鳴き声のことですよ。女神よ、ドードーとは存在する『もの』の名です。そちらは、探せばすぐに見…
「エルレイン。では、また後ほど。今度は人の姿で会おうぞ」 アレクセルがヒラヒラと手を振る。 「慰めるのにかこつけ、あなたに口づけできるのは緑色の時だけだからな」 初恋の人が現れて揺れる乙女心展開。甘さたっぷりでありながら、シリアス度も高くて………
「期待しなければ、裏切られません。喜ばなければ、悲しみもない。違いますか」 「……いいえ」 その通りだ。そして、たしかに寂しい。 「生きるための知恵です」 ぽつりとゼルイークは言った。まるで、同じ痛みを知るかのように。 「だからわたしは、出来ない…
予告状だ。 「出すのね」 「ああ。それが俺たちのやりかただからな」 ファリウスは貴族的な顔に微笑を浮かべて言った。 「明日だ。クレイユ・リレイ救出を決行する」 宿敵登場?イリーシュのがんばりで今回は切り抜けたけど、次はどうなるんだろう。 → 感想
「ごめんなさい」 そうしなければと謝った。なんとか、思いを伝えようとする。 「縮こまっていられないの。前を向いて進もうと、選んだの」 一巻よりも二巻、二巻よりも三巻が面白い。やっぱラブコメ要素って大事だなと思いました(単に僕が好きなだけ)→ 感…
どうしよう。 その言葉だけが回る。っていうか、ずっと回ってる。 どうしよう。今度は、誰にも言えない。 やっと。やっと気づいた。このあいだ。 あたし。先生を好きかもしれない…… 悶えまくりなお話でした。ああ、たまらん。 → 感想
「だから、行くのね」 流れる涙を、イリーシュは拳で乱暴に拭った。 九つの宝玉を捜し、<扉>をあける。約束の地、ゼセナナンへ。 「わかったか、火の玉娘」 「わかったわ!」 火の玉娘がまたひとつ成長してくれました。次は恋の行く末が気になりますね。 → …
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 あたしは、マネージャーまでがぶっ飛んでくるような悲鳴を上げた。 「ぱぱぱぱぱ、ぱぱ!?」 「さっきからそう言ってる」 「どうして、あんたがパパなのよー!!出たな妖怪!」 あたしだってわ…
「おまえ、それを本気で言っているのか?」 脅しつけるように訊くと、ビーはお得意のポーズをやった。首を傾げ、かわいらしく笑ってみせる。 「えへっ?」 「フン」 せせら笑うことで、イズーは返り討ちにした。 もう効かない。いや、ほんとは効いているが、…
「どうしよう。ごめんなさい、あなたを叩いちゃったわ」 「一度きりです」 こんな場合だというのに、アナベラスの声は笑いを含んでいた。 「わたしはその百倍を覚悟していました」 お転婆な女の子と、小生意気な男の子の掛け合いが魅力たっぷり!盗賊たちの…
『すっごくつらいことがあっても、次の日には、笑うことに決めてるの、あたし』 いつかの、ビーの言葉が胸にしみた。 きっと、ビーは明日、今日などなかったかのように振る舞う。そうやって頑張っているのは、必要だからだ。たとえ無理をしてでも、笑わなく…
「だろ?だから教えるんだよ。セルビエラに追いついたら、あの子のそばを離れるんじゃないよ。あの子が、おまえを守るからね」 護衛としてつけられたはずだと思うと、あべこべな気がした。それを見透かすように、アガードが続ける。 「そして、あの子を守っ…
「今日は『ひみつの魔女集会』の日です。集会の行われる今夜、魔女以外の外出は禁止です」 「男が今夜、外へ出たらどうなるんだ?」 「ふふふ」 返事代わりの含み笑いに、ぞっとした。精一杯、平気なフリをしながら、イズーはうそぶいた。 「そうか、ふふふ…
「あれが、村の秘密、ですか?」 ふたたび、荷馬車がゆっくりと進みはじめる中、イズーはたずねた。 「あのムスメが魔女だってことが?いいや」 ヘルムは笑った。 「何です?」馬鹿にされているようで、声が尖った。 「いや、すまんすまん」 詫びたヘルムは…