皆川ゆか

真・運命のタロット(9)下「世界」

「未来を決めるのは未来そのものじゃないよ」 和国は噛んで含めるようにいった。 「運命の絶対性を説いて、未来に待っていることを語ったとしよう。今を生きている人間にすれば、予言みたいなものだね。だが、それが本当に絶対だかどうかは、さっきもいった…

真・運命のタロット(9)上 「世界」

「儂らの戦いはどちらに正義があるというものでもなかろう」 ラオは通路の死体を顎鬚で示す。「互いの奉ずる理念の実現のために、儂らは戦っておる」 「犠牲なしでは得られない……と?」 まさかかの特別になりたい人があんなふうになるとは……。ライコの身体の…

真・運命のタロット(8)下 「吊るされた男」、そして…

「あたし、莫迦だ……やっぱり、ダチョウだ」 「そうだな、<女教皇>はダチョウかもしれぬ」 言葉とは裏腹に口調は優しい。 「だが、<魔法使い>はそのような<女教皇>でよいのだ」 ようやく。という気持ちでいっぱい。ツン、はやっぱ鍵なんですね。よかっ…

真・運命のタロット(8)上 「吊るされた男」、そして…

「水元ライコ嬢にカインが拘っているとは思えぬが」 「あいつが拘っているのは水元さんじゃない」 大河は肩を竦めた。 「負けたくないはずだ、あいつも」 誰に、と<戦車>が目で問う。 「<魔法使い>にさ」 <魔法使い>の登場が嬉しくなるけど、いまだ沈…

真・運命のタロット(7) 「隠者」は影に

「プロメテウスがティターンズに手を組もうなんて申し出て、信じられると思うか」 「僕とあなたの目的は合致していると思うよ」 カインは差し出した手を引き戻そうとはしなかった。 「ミナモトヨリコを鴻桂の計画に利用させたくはないんだろう?」 延々と虚…

真・運命のタロット(6) 「星」はなんでも知っている

「あんたが今わの際に遺した言葉<悪魔>ちゃんがいてあげる」 人差し指を『腕』の中へ差し込んだ。しかし剥離を使うまでもない。細胞に刻み込まれた残留思念の叫びを<悪魔>の霊核は耳にしていた。 ― <女教皇>から渡して。 初っ端のショックをどう表せば…

真・運命のタロット(5) 「悪魔」でも恋に生きる

「ははは」こちらの反応を見とがめ、田村は嘲笑った。 「そう、その顔よ。あなたは自分を信じてる。自分の行いが正しい結果を生んだと思ってる。それがわたしは嫌なの。嫌いなの。その傲慢さがあたしには耐えられないのよ」 フェーデの勝利が生む別れが、あ…

真・運命のタロット(4) 「審判」はレクイエムを歌う

「知ってしまったことの重さに耐えることのできぬ者は、知るべき資格を持たない」 「あたしには耐えられないっていうの」ムッとして思わず語気を荒げてしまう。「そんなこと、あんたに決めてもらいたくないけど」 「運命の重さに耐えられぬ輩が、プロメテウ…

真・運命のタロット(3) 「力」よ、と叫ぶ者

「それで、わかったん」 文華はあたしのほうへ目を上げた。 「『もし』は存在しないんよ。改変をやったいうたかて、その改変をしようとした根本の理由が消えるわけやないんよ」 フェーデの前の静けさってところかな。恋人たちが協力してくれるであろうフェー…

真・運命のタロット(2) 「正義」は我にあり

「こうなったら、一人でもフェーデをやってやるから」 「そうはいかない」 (えっ?) 「<女教皇>は<魔法使い>の協力者なのだ」 記憶がないのはわかるけど、魔法使いに対して、過去と同じところをぐるぐるしてるなあ。まったく素直じゃないんだから。さ…

真・運命のタロット(1)「教皇」がiを説く

「フェーデの決着をつけよう」 そういった<魔法使い>の声はどこか愉しげだった。 「ようやく<魔法使い>も<女教皇>に会えたのだからなァ」 初っ端から衝撃の展開に引き込まれるばかり。やっぱり頼子の側には魔法使いがいないとね! → 感想

運命のタロット(13) 「女教皇」は未来を示す

「今の<魔法使い>にはライコが必要なのだ」 彼の言葉に、あたしは小声でたずねる。 「協力者だから……?」 「ライコだからだ」 うっすらと感じていたつながりがかっちりと見えて「幸せに」という言葉がぴったりなラスト……と思ってたのに!第二部はどうなる…

運命のタロット(12) 「女帝」1995

「ライコは莫迦なことをいう」 「じゃあ、なんで?」 と問いかけて、あたしはハッとなる。 「まさか……あたしのために?」 まさかの13年超。思いがけない再会の嬉しさと寂しさと……。やるせない。 → 感想

運命のタロット(11)「神の家」は涙する

「おそらく、神は我々に、この不幸な世界を破壊することを求めておられる」 (破壊?) 戸惑いながら、オウム返しにきく。 「改変だ」 魔法使いの過去が見えるお話。さらに謎が増えたりして、ほんと困ります。それにしても月が託す想いがやるせない…… → 感想

運命のタロット(10) 「皇帝」はうなずかない

そうだ。 あんたことを起こしちゃいけない。時の流れをねじ曲げて、悲しまなくてもいい人たちに嘆きを与えるような真似は、絶対にさせちゃいけない。 皇帝ってまさか!だとすると女帝って……、ああもどかしい。うっすら見える景色が本当かどうか早く知りたい…

運命のタロット(9) 「太陽」は人々を照らす

<魔法使い>の様子は奇妙だった。彼もまた、言葉を発したまま、次の語をつむがずにいる。彼の背に、あたしはこわばったものを感じた。表情を見ることはかなわなかったけど、雰囲気で顔に浮かぶものを知ることができる。 「そう」 左眼の青年が冷静な声音で…

運命のタロット(8) 「戦車」が兄とやってくる

「少なくとも<魔法使い>にはプロメテウスにいた記憶がない。しかし、はっきりしていることはある」 暗い部屋の中、<魔法使い>の瞳が輝いていた。 「<魔法使い>は、連中のやり口が気に入らないのだ」 女教皇ってなに!?この一言だけで心のすべてが持っ…

運命のタロット(7) 「死神」の十字路

「ライコがいかに六割人前であろうと、短気でウソつきで、ダチョウのような女であろうと、だ」 <魔法使い>はわずかに後ろへ振れたあたしの顔を視界にとらえ、ニヤリと笑った。 「ライコは<魔法使い>の協力者なのだ」 女帝がいいキャラだなー。敵ながら素…

運命のタロット(6) 「節制」こそが身を守る

「Youは何も知らないみたいね」<節制>があきれたように評してくる。 「こんな少女のために、<恋人たち>が封印されたのは悲しむべきことだ」 紺屋はずれた眼鏡にふたたび手を当て、押し上げる。レンズの奥の目が光ったような気がした。 「<魔法使い>は…

運命のタロット(5) 「月」が私を惑わせる

「夢だよ、夢!」 単語ひとつで<魔法使い>はあたしがなぜこんな状態になってるのか理解してくる。ハッと顔をこわばらせた。 「その手があったか」 生硬な声音で返してくる。 「確かに、それは物理的な力ではない」 <恋人たち>とのフェーデ決着!いやー、…

運命のタロット(4) 「愚者」は風とともに

「それはないな」<魔法使い>が素っ気なく否定する。とりつくシマもない言い方。 「<虫>なり<恋人たち>なりが力を用いて、窓をあらかじめ開けておくということはないのだ」 (なんでよ) 「それは規定に違反する。協力者が凶行を行うために、窓を開くこ…

運命のタロット(3) 「運命の輪」よ、まわれ!

「Magecianのカードに宿る者の協力者として、Magecianこと<魔法使い>を助け、Loversこと<恋人たち>とのFehde―戦いに勝利を得んことを誓うか」 <魔法使い>はおごそかな調子でたずねた。きかれたあたしは即座に回答。 「誓う!」 これが改変か……。果たし…

運命のタロット(2)「恋人たち」は眠らない

「<魔法使い>にとって、協力者ってなんなの?」 「ライコよ」 嘲るようなニュアンスをこめて、<魔法使い>はいう。 「そのような言葉は、一人前になってからいうものだ」 二つの方面から物語が動いてくる……のかな?まだまだ話が広がりそうで楽しみ。 → 感…

運命のタロット(1)「魔法使い」にお願い?

「君には、これからいろいろなことが降りかかってくるよ。心しておくことだね」 まだ序盤って感じですが、最後にきて、これから先に波乱を予感させる展開が待ち受けててドキドキ。どんな展開が待ち受けてるのか楽しみです。 → 感想