田口仙年堂
「いいよ。俺のバカみたいな勇気でよければ全部やるよ。だから」 聞こえていないだろう。それでも良かった。 「お前の優しい勇気も、俺にくれよ」 ジュジュの弱さが露わになったことで、二人の距離がこれまでと違う形になった、いやなり始めたってぐらいかな…
「そりゃ健太郎と違って、俺はケンカなんて弱いですよ。健太郎も強いってわけじゃないし――だけど」 「何もできないのと、何もしないってのは違うと思うんです」 死神姫になつかれて、サザンアイズでいうところの无になっちゃった少年たちのお話。ちっこく無…
「いいのかよアーニィは!?」 「なにが!?」 「私たちの奴隷(ミロク)が、他の女に取られちゃうんだぞ!?」 「おい待てジュジュ、いま変なルビ振らなかったか!?」 ミロクたちが学園で遭遇した騒動を、反省文と共に振り返る短編集。コミカルながらも、…
「……俺じゃ、アイツに勝てないのか」 「ま、そーかもね」 あっさり肯定するディアートを睨む。だがディアートは顔色を変えず、 「けど、俺たちなら勝てるかもしれないだろ」 蘇る死者との戦い後編。姫を守る騎士たちが、信頼を通じて強くなっていく展開がい…
「お前らぁ!」 エイゴは力一杯叫んだ。 「ただいま!!」 二度目の魔王戦争が描かれるお話。かつての魔王話は重いものがあったけれど、二度目だから、経験者がいたから、今回は惨劇にならなかったんだと思います。狂信による悲劇はあったものの、子ども達の成…
「フッフッフ、今度は私が助ける番だぜ、ミロク!」 続くのかよ!とツッコみ。他国でもいろいろ騒動が起きてるけど、王女と騎士という関係を外から見ることで、よりジュジュを思ったんじゃないかな。助け合う関係から、相手の大切さが伝わってくる。→ 感想
世界を滅ぼすのは、魔人のような強大で理不尽な力。 だけど。 世界を救うのは、力でも言葉でもない。 一輪の花のような小さな笑顔があれば、それでいいのだ。 一瞬即発をどう切り抜けるのかと思ったら……ったく。これだから魔王は。エイゴの覚悟に、彼を支援…
「せんせ……ボク」 涙は止まっていた。だけど鼻水が流れて、汚い顔だった。 「助けて……ううん、助けたい」 力の強さを自覚させ、前を向かせようとするエイゴとそれに応える魔人の子供達のやり取りがとても素晴らしい。その繋がりを「魔人」と一括りにして正義…
目の前で人が傷つきそうだというのに、何もできないのか。 そんな時、トーラットがおもむろに魔導器を持ち上げた。 「ギャンブルというのはね、運だけに頼っちゃいけないんです。情報を集めて、できるかぎり勝率を上げなきゃディーラーの思う壺。運がモノを…
「ミロクがケガをした。これは見過ごせないよ」 「違うっ!」 胸ぐらをつかむ手に力をこめ、ありったけの声で否定するジュジュ。 「ケガしたんじゃねえ!ミロクは私を守ったんだ!それを間違えるな!」 二国の間で揺れるミロクがもどかしいけど、それだけジ…
「俺がやりますよ。休んでてください」 「いいんだ。俺たち、このぐらいでしか恩返しできないし」 そして騎士はミロクの手を強く握った。 「ありがとうな。俺も、俺の仲間も助かった」 劣等感あるが故にもどかしさを味わうことになるんだけど、本音でぶつか…
「念のために聞いておくよ。子供の命を危険にさらしたら許さないからね」 「んなことしねーよ」 「よろしい。なら存分におやり」 マリーベルの許可が出ると、子供たちはわぁっと騒ぎ出す。 「群が嫌いなのはアタシも一緒さ。ヒッヒッヒ」 町の人の敵意はつら…
「何が言いたいのか、わかるな」 「……まぁ、なんとなく」 かつて、同じことをした者がいた。 全てを捨て、世界中を敵に回した存在がいたのだ。 人はそれを「魔王」と呼ぶ。 残酷な現実と、それに立ち向かう優しさと。面白かったです。魔人にだって居場所はあ…
「綺麗っ!すっごく可愛いわよ心葉くんっ」 「うぉ……っ。こりゃ凄いな……」 「井上君、本当に女の人みたいです……」 「た、確かに凄いね……」 そこには完璧な年上の女の人がいた。 「ぼく、今日ほど遠子先輩の後輩であることを後悔したことはありません……」 ど…
「僕は……みんなを手伝います。気持ちよく反撃できるように」 そう、反撃はすでに始まっている。 皆、同じ気持ちで動いている。 すなわち、元の御色町を取り戻すために。 この広い御色町で、たった数人のレジスタンスだ。 ついに完結!最後まで泣かせてくれま…
「お主達に敗れてから、私も学んだのだよ。錬金術、古科学、魔術、占星術、もちろん現代科学も」 『そして、その学んだもので我らに復讐するつもりか』 「いかにも」 クライマックスに向けて盛り上げに盛り上げてくれますが、最後はガーゴイルらしいお話にな…
「かちょー、そるべげんきになったよ!」 「わっ、バカ!俺たちのことは黙ってろって言ったろ!」 そちらを見なくても分かっている。出入り口にさっきから五つの体温が感じられるのだ。 私もあの中に入れるのだろうか。 苦笑し、それでも彼らの心遣いに水温…
世界を救ってやるですって? 確かに救えるだけの力はあるでしょうよ。だけどアンタの言う救いは、絶対に誰かを不幸にする。 私がなりたいのは、テレビに出てくるような、ワケのわからない理屈だけど絶対に一人の取りこぼしもなく救えるヒーローなんだ。 吉永…
「あのなガーゴイル。おまえがウチにいられるのって、どうしてだと思う?」 『それは我が門番としての職務を果たしているからであり―』 「違うよガーゴイルくん。君が門番だからじゃない」 『むぅ、では我は何なのだ?』 「決まってる。もっと大切なものさ」…
「ひかるちゃん、荷物多いねー」 「やるからには、キッチリやらないとね」 そう、今回の相手は一筋縄ではいかない。 もしかしたら失敗するかもしれない ― そんな気になってくるほどだ。 なんたって、相手はあの怪盗百色なんだから。 おお、こうなるとは!ガ…
「離せガーゴイルさん!きゃた、脚立もってこい!俺の妹に ―!」 「落ち着くのだ林吾。汝は結局、誰が相手でも同じではないか」 「ほう吉永の小倅め。果実のように赤くなりおって。カワイイものよのぅ」 「和巳くんもやるねぇ。そうだな、梨々ちゃんにもいず…
「刀っつーのは、やっぱり道具なんだと思う。それもタチの悪い。そういったものに、思い出とか残しちゃいけないと思うんだよ」 「人を斬りにくくなるから、ですか」 「うーん、それもあるんだがな。俺だって人殺しはいけないと思うぜ。だけど刀や銃に芸術性…
「私たち、雇わない?今なら最高の仕事ができるわよ」 「今なら?」 「ええ、そうよ。今までの私たちは忘れて」 ひかるは自信を持ってうなずく。 「私とガー助、ふたり揃った鳥屋は、誰にも負けないから ― いや」 ひかるは首を振って言い直す。 「誰に負けて…
「いいか石像さんよ。俺たちエンターテイナーは、お客さんに笑ってもらうために泣くんだぜ」 「なんだと?」 「ピエロは仮面の下で泣くのさベイベ。俺達は一つの笑顔のために、血ヘド吐いて練習するのさ。さっき一輪車から落ちたクズも、きっと今頃、男泣き…
「我は、こんな石像だ。大事なもの一つ守れぬ、ちっぽけな存在だ」 こんな弱気なガーゴイルは初めてだった。 だけど今までで一番ガーゴイルを身近に感じた。 「それでも我は戦う。汝を守るために、御色町を守るために。もう大切なものはなくさぬ。双葉が我の…
『……我が………………守れなかった……』 それから、双葉と和巳が何度呼んでも、ガーゴイルが返事をすることはなかった。 「おいガーゴイル!返事しろ、ガーゴイル!」 「ガーくん!どうしちゃったんだよ!?」 ガーゴイルの機能は、完全に停止していた。 上下巻構成…
「でもね。そんな追いかけっこが、私は大好きでした」 今年初泣き。いやあ素晴らしいね!→ 感想
「さっきの双葉ちゃんを見てて、思ったの。やっぱりガーゴイルさんの影響を受けてるんだなぁって。双葉ちゃんは、誰かを守ることに躊躇しないもんね」 「だから私は―誰かのために盗む。あの人から盗んでみせる」 梨々再び!怪盗デビューのネーミングセンスに…
もしもあの時、彼がそばにいたなら― きっと、祭りのフィナーレは別のものになっていたことだろう。 「吉永ぁぁぁぁぁぁっ!」 最後の意地を振り絞って、松川が殴りかかった。 「松川ぁぁぁぁぁぁっ!」 最後の体力を振り絞って、吉永が殴りかかった。 二つの…
「それは ― 優しい敵ですね」 「優しくはないですよ、敵ですから」 なんて素敵な物語なんだろう → 感想