あざの耕平

東京レイヴンズ(6)

「儂らの世界において、『礼』とはすなわち『技』を指す」 「技?」 「左様。古くは人と神、のちには人と人との繋がりによって生ずる力。それを良く用いるがための技、作法、式こそ、『礼』じゃ。むろん、お主の言う道徳だの礼儀作法だのも、元を正せばこれ…

東京レイヴンズ(5)

「ま、おれのおかげだな」 「はい。春虎君のおかげです。……この責任は取ってもらわないと」 「え?何それ?どういう意味さ?」 「それは自分で考えて下さい」 短編の夏目無双っぷりがおヤバい。でも本編もまた人間関係が楽しいことになってきた。出来レース…

東京レイヴンズ(4)

「今日は私と春虎君だけ?」 「ああ」 「……ふ、二人だけで、街に、遊びに?」 「そう」 「……そ、それって、デー」 「ん?」 学園ラブコメ短編集。めっちゃたのしい。夏目さんの暴走と、意外に活躍するコンに、ニヤニヤが止まらなかった。いやー、続きがたの…

東京レイヴンズ(3)

「似合うか?」 「……ああ、悪くない」 春虎はマジマジと冬児を見つめて言った。」 そして、春虎は悪友が見せているのと同じ、皮肉っぽい微笑を唇に浮かべた。 「いかにも『人を食った』ところとか、な。お前にぴったりだせ、冬児?」 読んでる最中、うららア…

東京レイヴンズ(2)

「まあ、土御門の問題は別にしても、おれが迷惑かけてるんなら、正直、それについちゃ悪いと思う。申し訳ないと思うよ。でも、いまではおれも、あんたと同じ塾生だ。だから……」 彼女たちに向かって、春虎は静かに告げる。 「自分が陰陽師になることを、おれ…

ダン・サリエルと真夜中のカルテット 神曲奏界ポリフォニカ

「……なるほどな。音楽家にスランプの類はつきものとはいえ、話を聞く限り、相当重症のようだ」 「サリエルさまも強がってますが、内心は辛いと思います」 「ふむ。まあ、強がっている裡は、なんとかなると思うのだが……」 「でも、先生の場合、強がったあげく…

東京レイヴンズ(1)

「もう、嘘はつかない」 春虎は言った。 その言葉を聞いて、彼女はふっと小さく笑う。 「……当然です。嘘をつくような式神には、お仕置きなんですから」 ああ、もう素晴らしい!何という楽しさを見せてくれるラストなんだ!不安要素だと思っていた出来事が、…

BLACK BLOOD BROTHERS 11 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 賢者転生―

「まあ、お互いここまでせねば意地を通すこともできぬ未熟者同士と言うことか。分不相応の望みを抱いた報いだな」 「……ケイン」 二人の脳裏を過ぎるのは、特区を奪われた夜のことだった。大切なものを失い、己の無力に打ちひしがれたあの夜。あの夜を生き延…

BLACK BLOOD BROTHERS 10 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 銀刀出陣―

「いや、そんなことよりもずっと昔から、私は月下の裏切り者さ。それこそ、転化したそのときから」 だがな、とカーサは優しく続ける。 「そんな私でも、裏切りたくないものはある」 「な、なに?」 「決まってるだろ。血族さ。自分自身さ」 きてくれた、つい…

神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルとイドラの魔術師

「自分の音楽を認めさせるのは、簡単なことじゃない。ただし、君が言う通り、やる価値があることだ。オレは、そう信じている」 超面白かった!笑が止まらない。特にこのシリーズ初のバトルシーンは最高でした。でも本領は、3話以降ですよね。いつか彼女と一…

BLACK BLOOD BROTHERS S6―ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集 (6)

「本当にただの誤解なのですっ。カーサがただの冗談で……!」 「わかってるってば。カーサちゃんにも困ったもんだよね。だからジロー、ぼく、全然怒ってないから」 「本当なんです!信じて下さい!」 ジローが必死の弁解を続ける間、アリスは満面に笑みを浮か…

神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルと白銀の虎

「サリエルさまがご自分の演奏や、ご自分の音楽との接し方みたいなことで悩んでらっしゃるのは、ボクだって承知してます。そのことに対して口出しできるほど、ボクは音楽に詳しくありません」 でも、とモモは声に力を込めた。 「でも、サリエルさまはいつだ…

BLACK BLOOD BROTHERS 9 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近―

「アンヌさん。アンヌさんは先ほど、私や他の人たち、あなた自身や他の吸血鬼たちも、みんな滑稽に生きていると仰いました。滑稽に、頑張っていると」 「はい。確かに」 「世界中の頑張りが集まって世界の行方を少しずつ決めていくのだとすれば ――」 とミミ…

BLACK BLOOD BROTHERS S5―ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集 (5)

「ひいっ。そ、それは!?」 「ちょっ、ミミコさん!」 ジローとコタロウが顔色を変えて跳ね起き、大慌てでミミコを羽交い絞めにした。 「駄目ですっ。そのスーツとサングラスはいけませんっ。正気に戻ってください、ミミコさん!」 コミカルで楽しい短編集…

Dクラッカーズ+プラス 世界―after kingdom―

「ちょっ!み、水原くん!?」 「まあまあ。可愛い後輩にせがまれたら、嫌とは言えないじゃん?」 「『じゃん』はいいからっ。何言ったの!」 「うん?まあ、ハリウッドのホテルで景と梓ちゃんが張り込みしたときのこととか、ハロウィンのときのグリフィス天文…

Dクラッカーズ? 王国―a boy & a girl―

「で、他にも何かありますか、陛下?」 景がおどけて畏まる。梓はそんな景をじっと見つめた。それから、 「……目、つむって」 と言った。わずかに頬が赤い。 景は最初ぎくりとしたが、やがて唇を曲げてニヤリと笑った。 「嫌だ」 ときっぱり梓に告げ、 「君が…

Dクラッカーズ? 王国―the limited world―

頑張れ。頑張れ。負けては駄目だ。そう、心の中でなんども唱えた。そうとも。ついに手がかりをつかんだのだ。やられっぱなしなどでいられるものか。諦めたりするものか。 彼女にも見覚えのあるそれは、彼女に新たな活力と希望と意地とを与えてくれていた。そ…

Dクラッカーズ・ショート? 過日―roots―

「ははーん。そうだ。だったらさ、景ちゃん。ここは一つ、わたしたちの世代が避けて通れない、定番のトラウマ遊びをやりましょうか」 目と口を三日月のようにして、梓は邪な笑みを浮かべた。景は「トラウマ」という形容に不吉な思惑を嗅ぎ付けつつも、 「い…

BLACK BLOOD BROTHERS 8 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 宣戦恋歌―

聞こえますか? この巻を飾るのにふさわしい言葉は、この言葉以外にないと思います。読んでで武者ぶるいまくり!!続きがすっごい楽しみだなあ。→ 感想

Dクラッカーズ 5 追憶―refrain―

「何?嘘の次は言い訳する気?」 「そういうことじゃないだろっ!僕は何も―」 「わたしは景ちゃんが好きっ」 あの晩の言葉を、梓は繰り返した。そして、金槌で鋼を叩くような口振りで、力の限りこう叫んだ。 「一秒以内に答えなさい、物部景!あなたはわたし…

Dクラッカーズ 4 乱 ―rando―

「私も意外に思ったんだけど……」 と今度は茜までが口を挟んできた。 「あなたたち、つき合ってるわけじゃなかったの?私、DDにいるときは、そういう関係だって前提で、作戦を立ててきたのに」 「ち、違うわよ。茜さんっ。わたしたちは要するに幼なじみなの。…

神曲奏界ポリフォニカ ぱれっと

「コジ。あの晩お前が指摘したこと、すべてとは言わんが、当たっている。オレの中にも迷いはある。だが、その迷いすら、結局はひとつの物差しに過ぎん。そして、偉大なる音楽の前に、すべての物差しは平等だ」 「……老人たちの演奏に劣ると聞いて、ムキになっ…

Dクラッカーズ・ショート(1) 欠片 ―piece―

「お前があの、葛根東の海野千絵かよ?『アルティメット委員会』の?」 「あらあら。私の名前を知ってるみたいね。話が早くて助かるわあ」 「く、くそっ。馬鹿にすんなよ。海野っつったって、たかが女一人と優男一人じゃねえか。数もガタイもこっちが上だ。…

BLACK BLOOD BROTHERS S4―ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集 (4)

「サユカさんっ。いつまで飲んでんですかっ。立って下さいよ!」 「ひーん。ゼルマン様ぁー」 「泣いてる場合じゃないですって!死んじゃうからっ。このままだと死んじゃうから!」 「いやー。ゼルマン様が一緒じゃなきゃ、いやなのー。どこにも行きたくない…

Dクラッカーズ 3 決意 ―resolution―

「梓さんが目を覚ましたんですか?」 期待に弾む声で千絵が尋ねる。しかし次の瞬間、千絵は顔色を失った。 「いなくなった!?いなくなったって……梓さんが病室から消えたんですか!?」 こーくるか!ここからどう反撃していくか楽しみでなりません。→ 感想

Dクラッカーズ 2 祭典 ―ceremony―

ウィザードこそが仕組んだのだ。彼らは手玉に取られたに過ぎない。本当に、なんてことだろうか。 茜が衝撃から立ち直るのに前後して、隣で額に汗を浮かべていたビーグルがつぶやいた。 「これがウィザードの戦法か……」 こーくるか!いやはや、続きが楽しみで…

Dクラッカーズ 1 接触 ―touch―

「じゃあ犯人はどうすんの?」 「もし私の予想が外れてた場合は、警察が捕まえてくれるわ。時間と物量をかければ解決できる事件だってことだから」 「……当たったら?」 「そのときは」 と千絵の目が激しい瞋恚に燃えた。 「償いをさせてみせるわ」 いやあ、…

BLACK BLOOD BROTHERS 7 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 九牙再臨―

― ……コタロウ 「ん?なに、セイ?」 ― いま、余らに何か伝える言葉はあるだろうか?何か、必要なものが? セイが問う。彼が何者に助言を求めているのか、コタロウをのぞくその場の全員が理解した。 即答があった。 「覚悟を」 すばらしすぎる!熱き興奮と涙…

ネコのおと―リレーノベル・ラブバージョン

「富士見の作家さんってそんなに関係各機関から恨まれてるんですかっ。それともこれは富士見須を亡き者にしようとする○撃文庫の陰謀ですかっ。編集長、なにか心当たりはありませんかっ」 「ごっめーん、ないや!」 この桃色ネクタイ、何のために登場してきた…

BLACK BLOOD BROTHERS 6 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 九牙集結―

「あなたはそれでいいのですか?」 「だって困るもん」 「いないと?」 「そう。それに、ジローさんは?」 「私ですか?」 「ジローさんは困らないの?」 ジローは黙り込んだ。じりじり時間が過ぎていくのを、ミミコは、まんじりともせず待った。 「別れがも…