本宮ことは

鋼鉄の都市と十三月の旅人 ダイヤモンド・スカイ

「昔から、私のことを……?」 「ああ」 フォースが笑顔に戻った。とろけるような甘い笑みを浮かべる。 「愛しているよ、ディアレンシア」 これは……重い。カイエンの事情はわからなくもないだけに、光を手に入れるための方法を間違えたことが、なあ。豪華であ…

聖鐘の乙女 雪の聖画と氷の首飾り

「アティ、約束してほしいな」 「なんでしょう?」 「年が明けて最初の挨拶は、絶対に私が相手だよ?」 「……はああ?」 たんに煽ってるだけかと思ったのに……サリアン様がこんなにも責めてくるなんて!笑顔がうざ眩しい。振り回されることになったネイトも辛…

茨姫は嘘をつく。

「あなたは、どうしてもセルツァが気に入らないみたいだけど……そんなにセルツァが本当はいい人じゃ、困る?」 まさか行く先々に女がいるような卒の無いセルツァが、女の子にやられてしまうなんてね!はじめは反発してた少女が、助けてあげたことから懐いて、…

狼と勾玉 〜夜空に月の舟浮かべ〜

「御子様が人に戻りになるのって、どういうときなんでしょうね、いったい」 それがはっきりすれば―そう思って、神流は台与に問いかけた。 「台与姫様はご存じですか?御子様からなにか伺ってらっしゃいますでしょうか?」 その問いには、ひどく長い間があい…

夢見る宝石と銀色の恋人 ダイヤモンド・スカイ

「私を閉じ込めて、フォースと二人だけで暮らさせて、そして今も探し回って――いったい、私は皇帝のなんなのでしょう」 「……俺もそれが知りたい」 エルディックは大きなため息をついた。 「あんたは、今、この宇宙でいちばんの謎だよ、姫さん」 お婆さんが最…

聖鐘の乙女 水晶の笛と闇の時計

(きっと、また叱られちゃうな) ああ、自分はどこか変だとアティーシャはぼんやりと思った。 叱られてもいいから、会いたいと思うだなんて―― ああもうじれったかった!意識しすぎてギクシャクしていく二人にハラハラニヤニヤしつつ、まさかのサリアン様の登…

捧げよ、永遠に続く祈り 幻獣降臨譚

「私は――私だけは、そう考えちゃいけないんだよ」 旅を経て、多くの人と出会って、ようやく固まりつつある思いがある。 「私は、この世でいちばん強いから」 ついにシェナンの時代が!素直になった彼のアプローチが初々しくて良きものでした。もっと雰囲気を…

狼と勾玉 〜今宵、三日月を弓にして〜

「……人目がある処では、申し訳ございませんが王子、と呼ばせていただきます。ですが―他に誰もいない折は……」 神流は、少し赤くなりながら、手をついて改めて深々と礼をした。 「豊城様、と……」 銀金のような雰囲気の始まりにワクワクしてたら、王子が無駄に…

不敗の海賊と不死の帝王 ダイヤモンド・スカイ

「一緒に来い」 低くて、熱い声がした。 「俺は置いていったりしない」 ディアの純粋培養っぷりに振り回される人たちが楽しいな。あのお願い攻撃を断れる人はいるのかしら。謎と冒険もいいけど、海賊船内の恋愛模様がいろいろあって、大変ニヤニヤです。→ 感…

聖鐘の乙女 月の聖女と夜の怪人

「よって、命ずる」 ネイトに、サリアンはにっこり笑ってこう言った。 「学院祭当日、アティがすべての男たちの目を釘付けにするヒロインになれるように、最大限の手助けを」 楽しかったー!みんながアティ好きすぎる!→ 感想

轟け、暗雲薙ぎ払う雷鳴 幻獣降臨譚

「今度こそ、俺は間違えずにちゃんと君を守れたよね……アリア」 戦いを終わらせたいという思いが、功を焦るバカ王子と、立場を笠に着る王によって踏みにじられていく様は、失われた命を思うとやるせないですが、理想を追い、現実を知り、力と責務を負うアリア…

人形の館と鳥籠の姫 ダイヤモンド・スカイ

「俺はエルディック。海賊だ」 「海賊!?貴方がたが!?」 「そういうこと」 「だって……一本足じゃないのに!?」 前半はもどかしく、後半は面白く、終わってみたらまだ序章というそんな印象でした。閉ざされた世界で過ごすディアの思いと、大切と意識しな…

宝石姫は微笑まない。

気のせいに違いない。 一瞬、抱きしめられたかもしれない、なんて。 でも。 一生忘れない。 この思い出だけで一生生きていける。 前国王の娘が傭兵と共に隣国へ旅立つお話。これは素敵なラブストーリー。無口で時に無礼に感じる男に惹かれていく姫と、彼女の…

聖鐘の乙女 恋の歌劇と薔薇のドレス

「ずっとこのままでいいよ。このままがいいな。単なる男の子のサディのままで」 「今はそれでよくても……そのうち、かえって苦しくてたまらなくなるときがくるかもしれないわ」 「苦しい……?」 「ええ、見かけはどうであれ、周囲の扱いがどうであれ、あなたは…

叫べ、涙溢るるこの心 幻獣降臨譚

アリアの幼なじみが、どんどん暗いほうへと足を踏み出していこうとしている。このままでは、ディクスはこのリスタルに住む者にとって共通の敵となってしまう。 なんとかしなくては。 なんとかしてここを抜け出して―アリアに知らせなくては。 第三王子が意外…

花迷宮

今の帰蝶の心を動かすものは、みんな菖莉が与えてくれたものだ。そのことを改めて突きつけられたからこそ、こんなにも胸が苦しい。動揺して仕方ない。 「菖莉が好きなのか?」 孤児の娘と助けた衛士の恋物語。娘のように慈しみ、父のように懐く。幼いころは…

開け、細き一条の血路 幻獣降臨譚

アリアは今頃、どこにいるのだろうか。今の彼と同じように、こうして空を見上げることがあるのだろうか。そして、少しは彼のことを思いだしてくれたりしているのだろうか。 彼女の姿を見られない間に、思いだけが育っていく。 会いたい。 会いたくてたまらな…

聖鐘の乙女 獅子の城と銀の泉

「私はね、サディに、そんな悔やむような真似をさせたくはない」 サリアンは真っ直ぐにネイトを見た。 「人を守るというのは、身体だけを守ればいい、というものではない。その心と、志を守って初めて、守る、というのだと思うよ」 きゃー、サリアンさまー!…

進め、骸横たわる荒野 幻獣降臨譚

「いいか?忘れんなよ」 髪を撫でる手が止まる。 「いい女はたくさんいる。綺麗な女も、優しい女も、身分の高い女も星の数ほどいる。俺はいい男だから、これからもそんな女相手に選り取りみどりだ」 「……なんだ。やっぱり女たらしだって話じゃん」 「だがな…

翔べ、遙か朝焼けの空 幻獣降臨譚

「……君は、怖いお嬢さんだな」 トレンスはため息をついた。 「失礼だが、一見、どこにでもいる普通のお嬢さんみたいに見えるのに、鮮やかにこちらの意図をすくい出して突きつける。まるで、鏡のように」 「私は、ただ、優しくしてくださった方には同じように…

聖鐘の乙女 夏の王と秋の女神

「……お前も知ってるんだろ?『女神の贈り物』ってヤツなんだけど」 (やっぱり−!) 「なんでも、ラシード先輩が企画してて、全員参加っていうんだろ?寮に戻ったことがわかったら、イヤでも巻き込まれるじゃん」 「そ、そりゃそうですけど……」 「なんで俺が…

雪迷宮

でも、あと二月しかないと思ったら、そうせずにはいられませんでした。 あの人と会えるのも、あと何度のことでしょうか。 私が王に嫁ぎ、子を産んだら、あの人は任を解かれる。<鍵>ではなくなる。 そうなれば、もう会えない。 生まれたときから嫁ぎ先が決…

聖鐘の乙女 谷間の百合と水の乙女

「協力なさい。いいわね?」 「でも……」 「じゃないと、バラすわよ」 そう言って、ニコリと笑ったマデリーンの顔がとても綺麗に見えたのは何故なのだろう。 「あなたが ― 本当は女の子だって」 夏休み話前半。そういう属性がない人でもうならせるアディの天…

眠れ、蒼く深き海の底 幻獣降臨譚

「……アリアに惚れてるから、か?」 「……ああ」 何の迷いもなくそう言いきると、シェナンはまっすぐにライルを見て微笑んだ。 「私は修道騎士だ。だから、けして叶うことのない思いだともわかっている。おそらく、これが最初で最後の……」 語尾は途切れて消え…

囁け、この現世の秘密 幻獣降臨譚

「ゲイドは、あなたのお父さんは、連れていかれてしまったの ――」 「つ、連れていかれたって、誰に?」 トレンスが、沈痛な面持ちで答える。 「おそらく、闇の獣ケルベロスを信奉する闇の教団、『虚無の果て』に――」 過去の真実に驚き。この情報を掴んだシェ…

聖鐘の乙女 雨の音符と虹のメロディ

「サディ、今、君、どんな顔してるか、わかってる?」 涙でいっぱいになったアティーシャの大きな瞳を見つめながら、サリアンはそう言うと、白い手を伸ばした。アティーシャの頭の上にふわり、と手を置く。 「泣かないでくれ。……頼むから」 話があまりすすん…

聖鐘の乙女 黒猫と白の女王

「よかった」 サリアンはにっこりと微笑む。黄金の笑顔。 「猫が好きなくらいで、君に嫌われたら困ってしまうから」 ちょー楽しい!王子様はやっぱり王子様だよ!思わずごろごろしまくったお話でした。 → 感想

魍魎の都 姫様、それはなりませぬ

「うるさいわね。あの橘の粗忽者が文をよこそうがよこすまいが、私はぜんっぜん!まったく!ちっとも気にしてないんだからっ!」 「……ほう」 綾はにやり、と笑った。 「そーかそーか。お主が気にしておったのは橘家の若者か。それは気づかなんだ。いやー、わ…

掲げよ、命懸ける銀の剣 幻獣降臨譚

「あなたも、一度、板ばさみになって苦しんでみればいいんですよ。王命か巫女姫か」 「おまえ暗すぎ。頼むから人を自分と同じ窮地に陥れるのはやめてくれ。もっとも……」 ライルも、キルシュに負けず劣らず、暗い笑みを浮かべた。 「もう、板ばさみになってる…

聖鐘の乙女 光の王子と炎の騎士

「君の名前は?」 「サディ……です」 「じゃあ、サディ。君は私を兄と認め、これから私の弟になるかい?」 女子禁制の学院のお話で、↑みたいな会話が出てきたから、マリみて男版みたいな話になるのかと思ったらぜんぜん違いました。男装の女の子が、男の園で…