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煉獄姫 三幕

「もはや儂らにもぬしらにも、戦わない理由はない」 そして傲慢極まりない王のように、腕を振り下ろし、戦の火蓋を切る。 「存分に殺し合え、儂が許す」 ついに動き出したユヴィオールが恐ろしい。アルトにしろ、レキュリィにしろ、奥の手を使わざるを得なく…

魔王なあの娘と村人A―幼なじみは勇者です

「で、でも、おまえたちは自分がやれることがわかってて、将来も決まってて心配とかないだろ?やっぱりそれはうらやましいよ」 「そんな風に思うんだ」 竜ヶ峰は微笑んだ。だが、その微笑みはなぜだろう、どこか悲しげに見えた。 「でも……わたしは、あなたた…

魔石の伝説(5) 総司令官カーラン―「真実の剣」シリーズ第2部

「戦争でやらねばならないことに、正々堂々という言葉は通用しません。唯一正当な行いといえるものがあるとすれば、それは平和に暮らすために行われるものです。戦争の目的はただひとつ。殺すことです」 兵力差が十倍もあるのに戦いを挑み、幾度となく死と貞…

ばらばら死体の夜

「……閉ざされた庭、って意味なんだってさ。パラダイスって。パラダイスって聞くと、つい酒池肉林とか金ピカのエル・ドラドとか夢が何でも叶う場所のことかと考えちゃうけど」 (略) 「でも、もともとの語源は、閉ざされた、庭……ちいさくって、なんにもなく…

100万ドルの魔法使い

「きみはまったく強欲な魔女だ。僕の心を盗むまで満足しないんだ。魂を……僕の愛を手にするまで」 100年前からタイムスリップしてきた魔女の女の子が可愛くて可愛くて。魔女であることを隠しながら、こちらで出会ったお金持ちと駆け引きして……お互いの気持が…

公家武者 松平信平 狐のちょうちん

「信平様は、ほんとに欲がないのですね」 「武士は上を見なければ駄目だと善衛門は申すが、麿は腹いっぱい御飯を食べて、夜はぐっすり眠れたら、それでよいのじゃ。上を目指せば人を傷つけ、また傷つけられもするからな」 これは楽しかった。公家らしい気品…

魔石の伝説(4) エイビニシアの虐殺―「真実の剣」シリーズ第2部

「そんなに迷子になりたいのですか、リチャード」 「ぼくはもう迷子だよ、シスター」 リチャード、ゼッド、カーラン、共に大変な旅路になってるけれど、これから一番きつくなるのは、カーランじゃないかしら。ミッドランズで起こっている悲劇を食い止めるた…

風にもまけず粗茶一服

「たしかにあったら便利やけど、なかったかて、人間には知恵ちうもんがあるやろ。不便やなぁと思たここからがあんたの勝負や。ぼけーっとしてたら、ほんま飢え死ぬで。ここを生き抜いてこそ、初めて文明人面できるんちゃうか」 おお、遊馬が成長してる。相変…

わたしの黒い騎士

「最初は本当に怖かったもの」 「今はどうだ、ジル?」 「あなたの腕のなかほど安全に感じるところはないわ」 勘違いからすれ違っていたふたりが、ちょっとずつちょっとずつ、一緒になっていく様子がとてもよかった。結婚してから妻を篭絡しようとたくらむ旦…

先生の隠しごと 僕僕先生

「あなたが待っているから、先生にはあなたという帰る場所がある」 「俺が?」 「大切な人が迷って揺れている時は、一緒に揺れてはだめ。大樹のように動かず、その人がもたれかかれるように。雨風が吹きつけている時には、その枝で覆ってあげられるように」 …

桃の侍、金剛のパトリオット

「ふん……愛国心か、聞いて呆れるな」 モモは鼻を鳴らして、相手を見据えた。 「お前の愛国心は、己の歪んだ欲望を、国などという得体の知れぬものにかこつけているだけ……真の愛国心とは、国を愛する心ではない。人を愛する心だ!」 戦争に向かう時代に、日本…

魔石の伝説(2) 光の信徒―「真実の剣」シリーズ第2部

「でも……きっとぼくらにできることがあるはずだ。それを食い止める方法が」 「ぼくらですって?」ショータは彼の胸を指で突きながら、金切り声をあげた。 「あなたよ!あなただけなのよ、リチャード!あなただけ!あなただけがこの事態をなんとかできるの!」…

サクラダリセット(5) ONE HAND EDEN

「幸せの象徴だよ」 青。幸せ。偽物と本物。 「偽物の青と、本物の青を、どうやって見分けるのですか?」 老人は首を振る。 「誰かと一緒にいなさい。それだけでいい。隣にいる人が笑うことを、幸せと呼ぶんだ」 現実と差がない夢の世界で幸せは、本当の幸せ…

半熟作家と“文学少女”な編集者

「だって、快斗くんは、わたしの大事な作家ですもの」 楽しかったー。コミカルでさくさく読めるお話でした。俺様でお調子者な快斗が、気づいたら遠子先輩に乗せられて、これまで避けていた物事を経験して、物語を紡いでいく、その関係が良かったです。いくつ…

江姫―乱国の華(上) 浅井の幼姫

「女子は生きねばならぬ。生きて、生きて生き抜いて、その身に流れる血を後の世につないでいかねばならぬ。そなたらが背負うのは、浅井と織田の血。それを絶やしてはならぬ。命を軽んじ、血を絶やすことこそ、何よりの不面目と心得よ」 茶々は、初は、そして…

魔道士の掟(5) 白く輝く剣―「真実の剣」シリーズ第1部

「魔法のもつ皮肉な点のひとつじゃな。成功を手にする前には失敗を受け入れねばならんとは。それに、魔法の重荷のひとつでもある。未来の希望を守るためには、その結果を受け入れなければならん。たとえそれが、ほかのものの死であったとしてもな。自分本位…

魔道士の掟(3) 裏切りの予言―「真実の剣」シリーズ第1部

「お願い、ショータ。わたしを殺して。そうしなければだめよ。わたしはリチャードを守ると誓ったの。ラールを阻止するために。お願い」彼女はむせび泣いた。「それしか方法はないわ。わたしを殺さなければだめよ」 「それはできないわ」ショータはささやいた…

魔道士の掟(2) 魔法の地へ―「真実の剣」シリーズ第1部

「リチャード・サイファー、あなたにはわたしの気分をよくしてくれるおかしな才能があるわね。たとえわたしの死を語っているときでも」 「友だちっていうのは、そのためにいるんだよ」 「ありえない」と言われているけれど、リチャードとカーランの距離にき…

魔道士の掟(1) 探求者の誓い―「真実の剣」シリーズ第1部

「どうやって答えを見つけるかはまったく重要ではない。大事なのはそれを見つけるということだけじゃ」 森で出会ったミステリアスな女に興味をひかれて、そんな彼女と友だちになって手を貸していくうちに、当事者の一人になっていくという展開は、予想通りの…

サクラコ・アトミカ

「信じられる?」 「なにを?」 「ぼくと一緒に海へ行く未来を」 「信じられる」 サクラコは真面目に返事した。 「おんしと一緒の未来を」 作られた無敵の少年と、美しすぎる姫のボーイ・ミーツ・ガール。言葉を重ねるごとに思いが募り、心があることを実感…

私たちが星座を盗んだ理由

「首飾り座を盗んだのは、夕兄ちゃんでしょう?」 「そう、僕が盗んだんだ」 二十年間ずっと、私を悩ませ続けた謎。 「一体、どうやって星座を夜空から消したの?」 短篇集。どれもこれも、ラストが印象的なお話です。時にひと言が心をえぐり、時に記号が現…

羽月莉音の帝国(7)

「……お、お父さん」 「さあ行くんだ、莉音」 「……でも」 「フラフラするんじゃない。他人を犠牲にしてでも成し遂げたい目標があるのなら、自分の犠牲も顧みちゃいけない。覚悟を持て」 革命部VSロシア。宇宙ロケット成功を受けて、命がけの逃亡劇へと移り変…

愛のかけらは菫色

「ぼくはすべてを覚えている。そして、きみが忘れたというのも信じない。もし忘れているなら、思い出させる。どんなことをしてでも」 お互い相手を思っているのに、相手は自分を思ってないと勘違いすることから始まるじれったさは絶品でした。やばいわー、冴…

Fate/Zero(4) 散りゆく者たち

「思索は決してお前に答えをもたらさない。論理に縛られたその思索こそ、お前という人間を歪めている元凶なのだ。ならば、聖杯を手にして祈れ。しかる後に、アレのもたらしたものを見届けて、それを自らの幸福の形と知ればよい」 外道なマスターたちの思惑は…

烙印の紋章(8) 竜は獅子を喰らいて転生す

「忘れたか、オルバ。きみはメフィウス人だ。そして、いまタウーリアが戦っている敵もメフィウスなんだ」 その指摘に、オルバは身動きを止めた。 「そんあ時勢に、きみが勝手に動けばどうなる」 オルバが厳しい道を選んだことに大興奮。手紙だけでゾクッとき…

銀砂糖師と緑の工房 シュガーアップル・フェアリーテイル

「おまえが俺を助けるというなら、俺はなにをすればいい。教えろ」 「た、助けられる人は、なにもする必要はないと思う。ただ待ってもらえたら、それでいい」 「おまえが待てというなら、待つ」 「じゃあ……待って」 敵地に乗り込み、そこで初心を思い出すと…

問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES!ウサギが呼びました!

「俺が聞きたいのは…………たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」 彼は何もかもを見下すような視線で一言、 「この世界は…………面白いか?」 問題児たちのでたらめな強さが痛快だった。でも、魔王は更に強いっていうんだから、どうやって倒すことになるのか…

カレイドメイズ(2) もえない課題とやける乙女心

「カイルさんはいつも、わたしの欲しい言葉をくれますね。それも、言ってほしいと思うことではなくて、言われた瞬間にこの言葉が欲しかったと思えることを」 困難を潜り抜けることで、カイルとネーフェの仲が深まっていくのが良いものでした。ただ仲良くなる…

それがるうるの支配魔術 Game1: ルールズ・ルール

「俺の勝負に、乗るか?」 るうるの顔に、一瞬だけ嬉しさが広がった。そして、小さな拳をこつんと会わせてくる。 「乗る。大丈夫。キミならきっと出来るよ。だってキミは」 言葉を切る。そして、るうるは俺の目を見た。 「キミは、わたしを見つけたんだから…

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち

「わたし、古書が大好きなんです……人の手から手へ渡った本そのものに、物語があると思うんです……中に書かれている物語だけではなくて」 普段は内気で、それなりに会うようになっても、なかなか大輔と話が弾まない栞子が、本の話になると、目を輝かせていろい…